白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第34章 ● 一柳家での卒業祝い ○
テーブルには、ピザや寿司、唐揚げ、サラダなど、さまざまな料理が並んでいる。黒猫のミケは、おこぼれをもらおうと隙を窺っている。
「緒方先生、星歌の特別映像あるよ」
健はノートパソコンをテレビにつなぎ、得意げに再生ボタンを押す。画面に映しだされたのは、星歌の高校生活。
校外学習で弁当を広げる星歌、体育祭で全力疾走の星歌、合唱コンクールで真剣な顔で歌う星歌、さまざまな星歌が現れる。
星歌が顔を真っ赤にして叫ぶ。
「いつの間に撮ったの?」
「緒方先生、この体操服の星歌、ポストカードにしてもいいっすよ?」
「そんなのダメ!」
「…オレは、体操服を好む趣味はない」
緒方は小声で呟くが、耳は赤くなっていた。
文化祭、書き初め、カルタ大会…。そして、最後に流れたのは卒業式の日の校庭。薔薇の花束を抱えた緒方が、星歌に近づいていく。
「星歌、卒業おめでとう」
その声まで、しっかり録音されていた。花束を受け取った星歌が、涙を浮かべて笑う。2人の距離が縮まり、穏やかな笑顔での語り合い。緒方が星歌の頭を撫でてから、颯爽と車へ戻る。女生徒たちの歓声とともに、映像はフェードアウトした。
部屋が一瞬、静まり返った。
「これ、めっちゃいいでしょ?結婚式で使っていいよ?」
健が軽く笑って言うが、緒方と星歌は顔を赤くして固まったように動かない。
「そうそう、この卒業式の動画、棋院でも大好評だったんだよ」
「…え?…棋院でって…伯父さま、誰かに見せたの?」
「式後に棋院へ行ったら、白川くんと芦原くんがいてね、花束のことを聞かれたからな」
「…よりによって…白川…」
一柳の思いがけない言葉に緒方は頭を抱える。次に白川に会ったときは、絶対に冷やかされるだろう…。だが、一柳家の面々に迎えいれられ、こうして幸せな時間を過ごせているから許してやるか…。この映像だって、オレが星歌の恋人として認めてもらえている証拠に違いない。
春の夜の宴は、まだまだ続きそうだった。