白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第32章 ● 運命の夜 ○
夕飯は星歌のリクエストにより、緒方がカルボナーラを作ることになった。
「カルボナーラなんかでいいのか?」
「うん、精次さんが作るカルボナーラ、好き。それに、精次さんが初めて作ってくれたのがカルボナーラだったから、特別な料理って感じする」
星歌の笑顔に緒方の胸はあたたまる。2人は近所のスーパーで夕飯の食材を調達して、高めのアイスクリームも買った。
緒方が料理をしている間、星歌は熱帯魚に餌をやり、水槽を眺めている。何気なくも、幸せで穏やかな時間が流れている。
食事が終わって片付けを済ませると、緒方は努めて平静を装いながら言う。
「映画でも見るか?」
星歌は小さく頷き、ソファに並んで腰を下ろす。
画面に映るラブコメディは、どこか他人事のように流れていった。エンドロールが流れ、画面が暗くなった瞬間、部屋に静寂が落ちた。時計は23時を回っている。今夜は星歌を帰さなくてもいいんだ、緒方はその喜びを強く実感する。
「…風呂、どうする?」
星歌は膝の上で指を絡めながら答える。
「…シャワー…浴びる…」
その瞳は、期待と不安が半分ずつに揺れているようだった。大きめのトートバッグから、巾着袋やポーチ、パジャマを取りだしている。
バスルームの扉が閉まる音。やがてシャワーの水流が静かに響き、緒方の緊張は高まる。大きく深呼吸を繰り返す。落ち着け、星歌の気持ちが最優先だ。星歌が嫌がることは、絶対にしないと決意を新たにする。
寝室のエアコンの電源を入れて、部屋を軽くあたためる。
数分後、シャワーの音が止まり、湯上がりの星歌がリビングに現れた。髪は少し湿り、頬は赤い。もこもことしたあたたかそうなパジャマを身に着けて、恥ずかしそうにソファに座る。
緒方がシャワーを済ませてバスルームを出たときも星歌は、ずっと固まっていたかのように、ソファでこぢんまりとしていた