白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第30章 ● 卒業式には花束を ○
「星歌、卒業おめでとう」
緒方が差しだした花束を、星歌は両手で受け取る。そして、不思議そうな顔をして言う。
「…ありがとう、精次さん…。…対局は…?お昼の休憩中…?違うよね?…どうして…?」
「御器曽を早碁で倒してきたんだ」
「え?…そうなの…?…なんか、すごい」
星歌はクスクス笑う。薔薇の花束を優しい瞳でジッと見て、再び言う。
「ありがとう、嬉しい」
周りの生徒たちはすっかり静まり返り、緒方と星歌の様子を窺っている。
「約束は夜だったが…。今から、オレに時間をくれるか?」
「うん」
「外に車をつけてあるから、そこで待ってる。ゆっくりでいいからな」
「うん、分かった」
緒方が優しく頭を撫でると、星歌は目を細めた。軽く手を挙げ、緒方は振り返って門へと向かう。生徒たちのざわめきが戻る。
「星歌の彼氏ってハッピー緒方なの?」
「ねえ!ドラマみたいだったよ!ヤバかった!」
「星歌、幸せすぎるよ〜。羨ましい!」
女子生徒たちの歓声。感動で涙ぐむ者もいた。
「実物めっちゃカッコいい!」
「本当にハッピーセット着けてる」
そんな言葉を耳にしつつ、騒がしいな…と苦笑いしながら緒方は戻っていく。少し離れたところでは男子生徒が話しているのが見える。
「ハッピー緒方が彼氏なんて…聞いてないよ」
「絶対勝ち目ないだろ…」
…アイツらは、健くんが言っていた、星歌に告白したいヤツら、だろうか。そんなことをぼんやりと思いながら、門を出た。
車に乗り、シートにもたれて大きく息を吐く。なんだか、大それたことをした気がするぞ…。冷静になって振り返ると、恥ずかしさも湧いてくる。だが、星歌が喜んでくれたなら、それでいい。
さて、これからどうするか?とりあえず昼飯か。その後のことは2人で考えよう。星歌となら、どこへ行っても何をしても幸せだ。