白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第27章 ○ 2人の和解 ●
緒方はカフェのガラス扉を押し開ける前に、大きく深呼吸をした。こうしてカフェに来るのは憚られたが、星歌の姿をどうしても見たかった。以前のように2人きりで会うのはまだ難しそうだ。ここで黙ってコーヒーを飲むだけなら、きっと星歌も不安になることはないとの目算だ。
「いらっしゃいませ」
いつも通りの星歌の声が、店内に響く。緒方が着る黒のタートルニットを見た瞬間、星歌の手がピタリと止まる。2人の目が合う。
「…いつもの、オリジナルブレンド」
緒方はカウンターの端に座り、小さな声で注文した。
星歌がコーヒーを淹れる手元を、緒方は目で追う。そのうち、星歌が時折、自分をチラリと見ていることに気づいた。
…話しかけたい、だが、何と声をかければいいのか…。緒方は思案する。
沈黙が続く中、ドアが再び開いた。
「よ!緒方!」
白川の声が、店内の空気を変える。
「今日、なんか雰囲気違うな?黒タートル、めっちゃ決まってるぞ。そういうのも似合うな」
言い終えると、星歌を見てニヤリとする。
「ね?星歌ちゃんもそう思うでしょ?」
星歌は赤い顔で、小さくコクンと頷いた。追い討ちをかけるように白川は続ける。
「やっぱり星歌ちゃんのチョイスか。センスいいな、星歌ちゃん!」
「え!…なんで…」
星歌は小さな悲鳴を上げて、グラスに注いでいたピッチャーの水をこぼす。
無言の緒方は、耳から首筋までが赤くなっている。恥ずかしさをごまかすようにコーヒーカップを口元へ運ぶが、顔の熱さを実感している。
「ほらほら〜、緒方が照れてる〜」
「…うるさい、他の客に迷惑だぞ…」
緒方が小さく言うと、白川はカウンターチェアを回転させながら店内を見渡す。
「…他の客…?客はオレたちだけみたいだぞ?」
「…うるさい」
緒方の耳は、ますます赤くなっていた。