第10章 欲しがる者と与えるモノ
の表情からも、深夜のあの狂気じみた疼きは消えていた。
何度も何度も、ファットの熱い質量でナカを埋め尽くされたことで、身体に刻まれた「乾き」がようやく上書きされたのだ。
だが、静寂が訪れると共に、ファットに猛烈な罪悪感が襲いかかる。
「……俺は、なんてことを……。警護せなあかん立場の人間が、……まだ子供の君に、……こんな……っ」
ファットは震える手で顔を覆い、ベッドの脇で項垂れた。
ヒーローとしての矜持も、大人としての分別も、すべて食欲と情欲に負けて踏みにじってしまった。
その絶望に打ちひしがれる彼の手を、がそっと握る。
「……ファットさん。そんな顔、しないで……?」
「……ちゃん……。すまん、ほんまに、すまん……っ」
「いいの。……私から、お願いしたことだもん。……あんなに怖くて、身体が変になりそうだったのを……ファットさんの熱さが、助けてくれたんだよ。だから、気にしないで……ね?」
彼女は、昨夜の激しい行為を感じさせないような、慈愛に満ちた柔らかな微笑みを浮かべた。その無垢な言葉が、逆にファットの胸を鋭く刺す。
(俺は……一生かかっても、この子に顔向けできへん……。せやのに、まだ、さっきの味が、身体の奥に残っとる……ッ)
後悔と、彼女への消えない執着。
その狭間で彼が悶々としていると、がぽつりと呟いた。
「……あ。……あんなにシュッとしてて格好よかったのに、いつものファットさんになっちゃった」
「……え? ああ、エネルギー摂取しすぎたからなぁ……。……やっぱり、さっきの姿の方が良かったか?」
ファットが気まずそうに、丸くなったお腹をさすりながら聞くと、はクスクスと小さく笑った。
「ううん。別人みたいにかっこよかったのもドキドキしたけど……。今の、ぷよぷよしたファットさんの方が、可愛くて……私は好きだよ?」
「……っ!!」
その瞬間、ファットの心臓が大きく跳ねた。
「可愛い」なんて言われ慣れているはずなのに、彼女のその眼差しと、昨夜の濃厚な繋がりを思い出すだけで、顔が爆発しそうなほど熱くなる。
「……そんなん、……反則やわ、……ほんまに」
彼が真っ赤になって視線を泳がせていると、病室のドアの外から足音が近づいてきた。