第9章 囚われのお姫様
緑谷はの額に一度だけ強く自分の額を押し当てると、駆けつけたプロヒーローたちに彼女を託した。
その背中を見送りながら、は震える手で自分の身体を抱きしめるしかなかった。
地上へ運び出されたは、毛布に包まりながら戦況を見守っていた。
その時、激しい地響きと共にアジトの地面が大きく爆発した。
ーードォォォォォンッ!!!
「っ……!? 出久くん!」
土煙の中から現れたのは、エリを背負い、全身から凄まじい稲妻を放つ緑谷。
そして、巨大な塊と化した悍ましい姿の治崎だった。
「返せッ……!! それは私のものだッ! エリも……あの女も……私の計画を完成させるための部品なんだッ!!」
治崎の執念が地を割り、空を裂く。
だが、緑谷の100%の力は、もはやその執念すらも圧倒していた。
「……もう、誰のことも、君の道具になんてさせないッ!!」
ーー閃光、そして轟音。
緑谷の一撃が治崎の巨躯を粉砕し、アジト一帯を沈黙させた。
戦いは終わったが、エリの「巻き戻し」の個性が暴走し、緑谷の身体が光に包まれ激しく痙攣し始める。
「あ、あああああっ!!」
「出久くん!!」
遠くで見ていたは、自分の足の痛みも忘れて駆け出そうとしたが、側にいたプロヒーローが彼女の肩を強く制止する。
「ダメだ! 今近づいたら君まで消えてしまう!」
「でも、出久くんが……! 放して、お願い!!」
その時相澤の鋭い眼光が光を捉える。
彼が「抹消」を発動した瞬間、緑谷を飲み込もうとしていた暴走する光は一気に霧散した。
「……はぁ、はぁ……っ……先生……」
崩れ落ちる緑谷。
個性が止まったのを確認し、ヒーローの制止を振り切ったが、ついに二人の元へ辿り着いた。
「出久くん!!」
「……、ちゃん……。よかった……無事で、本当によかった……」
泥だらけで傷だらけの緑谷が、弱々しく笑う。
その姿を見て、の瞳から、一週間堪え続けていた涙が、堰を切ったように溢れ出した。
「馬鹿だよ……。自分のこと、ボロボロにしてまで……っ」
「ヒーローだから……当たり前だよ……。君を守る、ためなら……」
相澤は、ボロボロになった教え子たちを静かに見守り続けた。