第9章 囚われのお姫様
数時間後、部屋に戻った治崎は、ドアを開けた瞬間に鼻腔を突いた「匂い」に足を止めた。
それは、本来なら汚物として切り捨てるべき人間の体液の臭いではなかった。
「……なんだ、この芳醇な香りは」
「若頭、ご覧ください。……驚くべき純度です」
差し出されたグラスには、真珠のような光沢を放つ白濁した液体が満たされていた。
治崎は嫌悪感を滲ませながらも、その奥に潜む強大なエネルギーに抗えず、グラスを掴んだ。
「……毒見だ」
そう自分に言い聞かせ、一口、その液体を喉に流し込む。
その瞬間、治崎の瞳が大きく見開かれた。
「……っ!」
舌の上で爆ぜる圧倒的な甘みと、身体の細胞一つ一つが再構築されるような、凄まじい「個性」の活性化。
「は、ぁっ、…かつ、き、くん……助けて……っ」
椅子の上で、搾り取られ、突き上げられ、ボロボロになって震える。
治崎はその潤んだ瞳を、今度は「道具」としてではなく、一人の「女」として、いや、それ以上の「至宝」として見つめた。
「……素晴らしい。これほどまでの価値があるとはな」
治崎は自ら機械のスイッチを切った。
急に訪れた静寂に、が力なく首を垂らす。
「その女を解け」
「はっ? ですが、まだ搾取の途中では……」
「……黙れ。これほどの『苗床』を、こんな不潔な部屋に放置しておくのは不合理だ。一度、隅々まで清め、私の管理下に置く。……ここも綺麗にしておけ」
拘束を解かれたの身体が、崩れるように治崎の腕の中に落ちた。
彼女の髪を掴み、その耳元で冷酷に、けれどどこか熱を帯びた声で囁いた。
「感謝しろ。お前を一度『聖域』へ連れて行く。そこで、その身体を根こそぎ洗い清めてやる。……二度と、他の男の匂いが思い出せなくなるようにな」
「……や、だ……あ……っ」
意識を失いかける彼女を治崎は欲望を瞳に宿して部屋を後にした。