第8章 囚われの姫と、深淵の月【無惨夢】
そして、運命の満月の夜。
「外へ出るぞ。今宵は格別だ」
彼に連れられ、無限城の外へと降り立つ。
目の前に広がるのは、白銀に輝く巨大な満月。
「貴様の瞳と同じ色だと思った。……受け取れ」
冷酷な鬼の王が、ただあたしの喜ぶ顔を見るためだけに用意した、月の絶景。
その横顔に宿る、嘘偽りのない独占欲と忠実なまでの愛。
「……私は、もう……」
敵であるはずの彼に、震える手で手を伸ばす。
今までに感じたことのない情熱が全身を駆け巡り、あたしは自ら、彼の胸へと飛び込んだ。
今宵、これまでの略奪とは違う、心まで繋がるような熱く甘美な抱擁。
「あぁ……愛している、無惨様」
快楽の海に溺れ、完全に彼のものとして堕ちていくあたし。
その肩越しに、無惨は計画通り獲物を手に入れた悦悦とした笑みを、暗闇の中で静かに浮かべていた。
無惨(お前はもうあの頃に戻させない。絶対に…)
【完】