第6章 不動の慈愛、震える情熱 ― 悲鳴嶼と繋ぐ命【番外編】
それから月日が流れ、
悲鳴嶼さんとの間には、驚くほど健康で、真っ直ぐな心を持った男の子が誕生しました。
名前は「行(あん)」。
行くんは、幼いながらも悲鳴嶼さんのように落ち着いた佇まいで、困っている人がいると真っ先に駆け寄るような、慈悲深い子に育った。
「南無……。行、あまり遠くへ行ってはいけない。
……私の手の届く範囲にいなさい」
悲鳴嶼さんは、行くんが庭で遊ぶ気配を全神経で感じ取っている。
行くんが転びそうになれば、どこからともなく巨大な悲鳴嶼さんが現れ、ふわりと大きな手で支える。
「父さま、お花が咲いたよ!」
行くんが摘んできた花を悲鳴嶼さんの大きな掌に乗せると、彼はその花の香りを嗅ぎ、そして息子の頭を大きな手で包み込む。
「……ああ、良い香りだ。お前は、お母さまによく似た、優しい心を持っているな」
あの厳格だった悲鳴嶼さんが、息子の前ではただの「優しいお父さん」になり、時には行くんを大きな肩に乗せて屋敷を散歩する姿は、柱たち全員が頭の上がらない、この屋敷で最も尊い光景となりました。
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