第6章 不動の慈愛、震える情熱 ― 悲鳴嶼と繋ぐ命【番外編】
他の柱たちが次々と父親になり、賑やかな家族を築いていく中で、悲鳴嶼さんはずっと一歩引いた場所から、慈悲深い眼差しで皆を見守っていた。
けれど、その巨大な胸の内には、彼にしか抱けない熱い願いが秘められていたのだ。
ある雪の降る夜。
悲鳴嶼さんの屋敷は、静まり返っていました。 修行を終え、数珠を爪繰る彼の背中は、山のように大きく、どこか孤独で。
私がそっと傍に寄ると、彼は盲目の瞳をゆっくりとこちらに向けました。
「……殿。皆の子供たちの声が聞こえる。……命とは、なんと美しく、尊いものか」
彼は大きな掌を、私の頬にそっと添えた。
「私は、自分がこの手で何かを育むことなど、許されぬ身だと思っていた。……かつて子供たちを守れなかったあの日から、私の時は止まっていた。だが、君と出会い、君の温もりを知って……私は、初めて『未来』を欲してしまった」
彼の大きな体が、微かに震えている。
「……醜い我欲だ。だが、君との間に宿る命を、この手で抱きしめてみたい。……君と俺を繋ぐ、消えない灯火(ともしび)を……残したいのだ」
悲鳴嶼さんは私を軽々と抱き上げ、自身の大きな布団へと誘った。
彼の愛し方は、他の誰よりも重く、深く、そして圧倒的で。
岩のように逞しい腕が私を包み込み、まるで世界から私を隠してしまうような、絶対的な保護と執着。
「……南無……神よ、仏よ。今夜だけは、この愚かな男の願いをお聞き届けください」
そう呟くと、彼は熱い吐息と共に、私を慈しむように、けれど激しく求めた。
彼の流す涙が私の胸に落ち、私の中に、不動の岩をも動かすほどの強烈な「愛」が注ぎ込まれていきた。
それは、命を懸けてあなたを、そして産まれてくる子を守り抜くという、魂の誓いそのものでした。
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