第5章 水の心の凪、そして芽吹き ― 義勇と繋ぐ命【番外編】
それから月日が流れ、
義勇さんとの間に待望の男の子が誕生した。
名前は「義一(ぎいち)」。
その子は、義勇さんそっくりの深い蒼色の瞳を持ち、赤ん坊とは思えないほど落ち着いた、物静かな子だった。
「……俺に似て、あまり笑わないな。寂しい思いをさせていないだろうか」
義勇さんは、義一くんを抱きかかえながら、生真面目な顔で心配している。
けれど、義一くんが小さな手で義勇さんの指をぎゅっと握ると、義勇さんの口元が、わずかに、けれど幸せそうに綻びました。
「……ああ、温かいな。
お前の中に、錆兎や姉さん、そして俺の生きた証が宿っているんだな」
それから、数日後。
賑やかな広場の隅っこで体育座りをしていた義一くん。
他のパパたちに「なぜ隅っこに?」とからかわれていましたが、実は違った。
「……父さま、あそこに、綺麗な石があった。母さまに、あげるんだ」
義一くんは、小さな手のひらに隠していたキラキラした小石を、仕事から戻った義勇さんに見せた。
義勇さんはその場に跪き、息子を抱き寄せた。
「そうか……。お前は俺に似て、口下手なだけだったんだな。……優しい子だ」
義勇さんは、私と義一くんを同時に抱き寄せ、静かな、けれど揺るぎない幸福を噛み締めていた。
ついに揃った、愛の結晶。
義勇さんの手には、もう「孤独」ではなく、愛する家族の温もりがしっかりと握られていたのでした。
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