第6章 口溶けショコラ 【呪術廻戦 七海建人vs五条悟】
「彼女はあなたのペットではない。彼女のサポートのおかげで、私の任務の効率は劇的に上がっています。……それとも、最強のあなたは、補助監督の優秀な働きを理解できないほど余裕がないのですか?」
「……言うねぇ」
五条の口角が吊り上がった。
冗談めかしてはいたが、空気は一気に冷え込んだ。
「ナナミンこそ。かつての同級生だからって、ちょっと甘えすぎじゃない? に何かあったら、君、責任取れるの?」
「ですから、それを未然に防ぐのが私の役目です。……行きましょう、さん」
「あ、はい! 失礼します、五条さん」
七海に促され、は一礼して歩き出した。
その後ろ姿を、五条はポケットに手を突っ込んだまま、面白くなさそうに見送った。
「……あーあ。面白くない。明日、ナナミンにだけめちゃくちゃ面倒な報告書、押し付けてやろうかな」
誰もいなくなった廊下で、最強の術師は子供のように小さく毒づいた。
二月の風は刺すように冷たかったが、高専の廊下を歩く五条悟の足取りは驚くほど軽やかだった。
「さてさて、今年のチョコは何かな〜。やっぱり僕の好みを熟知した特注品かな?」
五条の頭の中は、もうすぐやってくるバレンタイン一色だった。
卒業後、自分の専属のように動いてきた彼女からのチョコとデートは、五条にとって当然の「既定路線」だった。
五条は資料室で作業中のを見つけると、いつものように背後からひょいと顔を覗かせた。
「! 今年の14日なんだけどさ。例の店、予約しといたから。18時にいつもの場所ね!」
当然「はい」という返事が来るものだと思っていた五条。
だが、は困ったように眉を下げて振り返った。
「……すみません、五条さん。その日はもう、先約があって」
「えっ? 先約? 任務?」
「いえ。七海さんと、一緒に食事に行く約束をしているんです」
五条の動きが止まった。目隠しの奥で、思考が数秒フリーズする。
「……七海と? なんで? 14日だよ?」
「七海さんが、いつもサポートしてくれているお礼にと誘ってくださって。お世話になっているのはこちらの方ですが、お受けしたんです」