第6章 口溶けショコラ 【呪術廻戦 七海建人vs五条悟】
「もう、また七海のとこ行くわけ?」
高専の廊下に、不機嫌を隠そうともしない声が響いた。
声の主は、現代最強の術師の五条悟。
彼は長い脚を投げ出してベンチに座り、目の前を通ろうとした補助監督のを呼び止めた。
「あ、五条さん。お疲れ様です。七海さんから現場への同行依頼が来てまして」
が書類を抱えたまま足を止めると、五条はわざとらしく深くため息をついた。
「ナナミンもナナミンだよね。自分一人で大抵のことはこなせるくせに、を連れ回してさ。……大体、君は僕の専属みたいなもんでしょ?」
「そんな決まりはありませんよ。私は補助監督ですから、要請があればどこへでも行きます」
「ダメ。行かせない」
五条は立ち上がると、ひょいとの頭の上に手を置いた。
その仕草は親しげだが、放たれる圧力は相当なものだった。
「……五条さん、これじゃ仕事になりません」
「いいじゃん、今日は僕の任務についてきてよ。簡単なやつだから。怪我もしないし、僕が全部終わらせる。は車の中で美味しいスイーツでも食べて待ってればいいから」
五条の言葉に、は少しだけ表情を曇らせた。
かつて術師を目指していた頃、適性が低く、任務のたびにボロボロになって帰ってくるを見かねて、「卒業前に補助監督に転向しろ」と強引に道を変えさせたのは五条だった。
「私は、もう守られるだけの人間じゃないんです。七海さんは、私を『対等な仕事のパートナー』として頼ってくれています」
「……へぇ。あいつ、そんなこと言ってるんだ」
五条の目隠しの奥の視線が、少しだけ鋭くなった。
「五条さん。彼女を困らせるのはやめていただけますか」
背後から低く、落ち着いた声が響いた。
七海建人が、いつも通りの隙のないスーツ姿でそこに立っていた。
「おっ、噂をすれば。ナナミン、僕のを勝手に連れ出さないでくれる?」
「『僕の』ではありません。彼女は公的な職員です」
七海は淡々と告げ、の隣に並んだ。