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夜の秘め事【裏夢の短編集】【R18】

第2章 しゃけ大根に溶ける貴方の心 【鬼滅の刃 冨岡義勇】


無限城が鳴動し、最終決戦の火蓋が切られたという知らせは、鎹鴉の悲痛な叫びと共に彼女にも届いた。
静まり返った夜の帳の中、彼女は鱗滝左近次の隣で眠り続ける禰󠄀豆子の傍らに座っていた。

義勇の妻となり、隠の任を解かれてから数ヶ月。
今、最愛の夫は生死の境を彷徨う戦場にいる。

「……義勇さん」

彼女は、胸元に下げた御守りをぎゅっと握りしめた。
少し前に義勇から渡されたものだった。

「……大丈夫。あの人は、必ず帰ってくると約束してくれたから」

自分に言い聞かせるように呟いた声が、静かな部屋に震えて落ちる。
その時、鱗滝が天狗の面越しに静かに声をかけた。

「…。義勇を、信じてやってくれ」
「……はい、鱗滝さん。分かってはいるのですが……あの人は、自分の命を、どこか軽んじているところがあるから」
「……あいつは変わった。お前を妻に迎えてから、義勇の放つ『気』は、以前のような絶望に満ちたものではなくなった」

禰󠄀豆子を見つめながら鱗滝は静かに語る。

「かつてのあいつは、死に場所を探しているような危うさがあった。だが、今のあいつには帰る場所がある。守り抜きたいと願う、お前という『光』がある。……それは、剣士にとって何よりの強さになるのだ」
「私の存在が、強さになっているでしょうか……?」
「ああ。あいつが笑うようになったと、炭治郎からの手紙にもあった。……、義勇を支えてくれて、本当にありがとう」

不意に告げられた感謝の言葉に、彼女の瞳から大粒の涙が溢れ出した。

「……っ、そんな……。お礼を言うのは、私の方です。鱗滝さんが育ててくださったから、私はあの人と出会えました。あんなに不器用で、優しくて……愛おしい人に」

彼女は溢れる涙を拭いもせず、真っ直ぐに鱗滝を見つめた。

「鱗滝さん。……あの方が帰ってきたら、私は全力で甘やかすつもりです。……ずっと、笑っていてほしいんです」
「……うむ。それがいい。……、一つ頼みがある」

鱗滝の声が、少しだけ真剣みを帯びた。

「義勇は、生き残ったとしても、心に深い傷を負うだろう。仲間を失い、己の非力を呪うかもしれん。……その時は、お前がその傷を包み込んでやってくれ。……あいつに『生きていて良かった』と、心から思わせてやってほしい」

「……はい。約束します」


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