第2章 しゃけ大根に溶ける貴方の心 【鬼滅の刃 冨岡義勇】
「は、元気か」
「ああ。毎日、俺の帰りを待っている。……彼女がいるから、俺は、また明日も生きて帰ろうと思える」
一切の迷いもなく言い切った義勇に、宇髄は呆れたように天を仰いだ。
「おーおー、ご馳走様。あの無口な冨岡をここまで変えるたぁ、大したもんだぜ。派手に惚れ抜いてやがるな」
「…………」
義勇は黙り込んだ。
その沈黙は拒絶ではなく、肯定の証だった。
宇髄は立ち上がり、義勇と向き合った。
「俺は引退して、嫁たちと派手に余生を楽しむ。……冨岡。お前はまだ、地獄の真っ只中だ」
宇髄の表情から笑みが消え、柱としての真剣な眼差しが戻る。
「だが、守るべきもんがある男は強いぜ。……あの娘を泣かすんじゃねぇぞ。もし泣かせたら、引退した俺が引っぱり出してでも奪い返しに行ってやるからな」
「……させない。あいつの涙は、俺が拭う」
「……言ってろ」
宇髄は満足げに鼻を鳴らすと、背中を向けて歩き出した。
「せいぜい幸せになりな。……あばよ、冨岡。によろしくな」
「ああ。……宇髄、これからは、ゆっくり休め」
遠ざかっていく音柱の背中を見送りながら、義勇は胸元の懐に手を入れた。
そこには、が「お守りに」と持たせてくれた、手作りの匂い袋が入っている。
ふわりと漂う、あの屋敷の香り。
義勇は少しだけ足を早めた。
今日の任務を早く終わらせ、彼女が待つ、温かな鮭大根の香りがする「家」へ帰るために。