第2章 しゃけ大根に溶ける貴方の心 【鬼滅の刃 冨岡義勇】
目が覚めた時、の視界に飛び込んできたのは、遊郭の極彩色の天井ではなく、見慣れた質素で清潔な杉の天井だった。
鼻を突く白粉の香りは消え、代わりに懐かしい白檀の香りと、そして……すぐ隣から伝わる、静かな体温。
「……気がついたか」
耳元で響いた低く、落ち着いた声に、は肩を震わせて横を向いた。
そこには、隊服を脱ぎ、着流し姿で自分を見守っていた義勇の姿があった。
「……ここ、は……」
「俺の屋敷だ。……もう、あそこに戻る必要はない」
義勇の言葉に、昨夜の記憶が濁流のように押し寄せる。
激しく求められた熱、自分の名前を呼ぶように懇願した彼の声、そして、初めての痛みが甘い快楽に溶けていった感覚。
は顔を真っ赤に染め、布団を首元まで引き上げた。
「……冨岡様、……私、任務はどうなったのですか? 宇髄様に、叱られてしまいます……っ」
「宇髄には話した。身請けの金も払ってある」
「身請け……!? あんな大枚、どうされたのですか!」
「……給金だ。使い道もなく貯まっていた。……お前のために使えるなら、安いものだ」
義勇は淡々と言い放つが、その視線はどこか気まずそうに逸らされている。
は絶句した。柱の給金がどれほど高額か知っているが、それを自分のためにすべて使い果たすなど、常軌を逸している。
「……でも、私のような隠一人のために、そんな。私は、ただの……」
「『ただの』ではないと言っただろう」
義勇は布団の上から、の体を抱き寄せた。
昨夜の獣のような激しさは影を潜めているが、その腕の力は、二度と離さないという静かな執着に満ちている。
「お前は、俺の妻になる女だ。……それとも、あんなに何度も俺の名を呼び、肌を重ねておきながら……まだ、他人だと言い張るつもりか」
「……っ。そ、それは……」
は言葉に詰まり、彼の胸に顔を埋めると、義勇の手が、優しく、けれど独占欲を隠さずに彼女の髪をなでた。