第11章 純白の境界線 【ヒロアカ 爆豪vs轟vs相澤】
あれから一年後のホワイトデーの日。
ついに迎えた式の当日。
結婚式場の扉が開き、新郎である相澤が姿を現した瞬間、会場内にはどよめきを通り越した衝撃が走った。
「……え、誰だ、あれ……?」
「嘘だろ、あれ相澤先生かよ!?」
普段のボサボサの髪はきっちりと整えられ、不精髭も綺麗に剃り落とされている。
眩いばかりの純白のタキシードに身を包み、背筋を伸ばして立つその姿は、教壇に立っていた頃の彼とは別人のように洗練されていた。
普段の気だるげな印象を完全に拭い去り、大人の男の品格を漂わせるその変貌ぶりに、クラスメイトたちはもちろん、普段の彼を知るプロヒーロー仲間たちさえも目を丸くして絶句している。
だが、その驚きを上書きするように、会場の空気が一変した。
聖歌の調べと共に、新婦――が入場する。
純白のウェディングドレスを纏い、ベールの向こうで恥じらうように、けれど誇らしげに微笑む彼女の美しさは、言葉を失わせるほどに神々しかった。
「……お姉さん、綺麗!」
エリが小さく漏らしたその言葉が、会場全体の総意だった。
かつて彼女に密かな想いを寄せていた爆豪や轟も、その瞬間だけは静かに目を見開くしかなかった。
今のの顔には、迷いも、怯えも、汚れも一切ない。
ただ一人、愛する男にすべてを捧げた女としての、至高の幸せの輝きだけがそこにあった。
はゆっくりと歩を進め、相澤の隣に立つ。
真っ白なタキシードに包まれた逞しい腕に、自らの腕をそっと絡ませた。
相澤の左目が、慈しむように彼女を見つめる。
はそんな彼を見上げ、世界で一番幸せだと、全身で叫ぶような満面の笑みを返した。
一年前のホワイトデー、白濁に塗れて流した涙。
隠し続けた指輪の重み。
乗り越えてきたすべての時間が、今この瞬間のためにあった。