第11章 純白の境界線 【ヒロアカ 爆豪vs轟vs相澤】
壊理を連れ歩く相澤の姿を初めて見たときは、目の前が真っ暗になった。
「隠し子か」と本気で絶望し、人知れず涙した夜もあった。
のちに誤解だとわかって安堵したものの、自分の独占欲の強さに自己嫌悪に陥ることもあった。
白雲の件――黒霧の正体を知り、かつての友の名を叫び、打ちひしがれていた彼を見たときは、胸が張り裂けそうだった。
かけるべき言葉が見つからず、ただ何も聞かずに、彼の隣で温かいコーヒーを淹れ直すことしかできなかった。
そして、あの全面戦争。
死地から生還した彼の姿は、あまりにも痛ましかった。
失われた右目と右足。
病室のベッドで深い眠りに落ちている相澤の傍らで、は幾夜も祈り続けた。
「……相澤、先生、……」
ようやく彼が目を覚ましたとき、は周囲の目も憚らず、その細くなった身体に泣きながらしがみついた。
その場にいたマイクが「おっと……」と空気を読んで席を外すほど、彼女の感情は決壊していた。
「……先生が、死んじゃうかと思った、……私を、置いていかないで……っ」
泣きじゃくりるを見て、相澤は残った左目で天井を仰いだ。
生徒と教師。
その一線は、もうとうに彼女の熱意に焼き切られていた。
「……泣くな、……俺は、ここにいる」
相澤は彼女の小さな身体を力強く抱き寄せた。
それが、彼が初めて彼女の想いを受け入れ、一人の女として抱きしめた瞬間だった。
その後も、世界は残酷に戦いを強いた。
「必ず無事で帰ってきて」
互いに別の戦場で命を懸ける前、交わした約束。
は彼という帰るべき場所のために戦い抜き、相澤もまた守るべき教え子の、愛しい女の元へ帰るために限界を超えた。
すべてが終わり、瓦礫の中に新しい芽が吹き始めた頃。
二人はようやく、静かな平穏の中で正式に手を繋いだ。
彼の視線が、いつしか「教え子」を見るものから、「一人の女」を捉えるものへと変わっていく予感。
その僅かな変化を逃さず、は月日をかけて、彼の頑なな理性を溶かしてきたのだったーー。