第2章 しゃけ大根に溶ける貴方の心 【鬼滅の刃 冨岡義勇】
手当てが終わり、片付けを始めようとしたの手を、義勇の右手がそっと包み込んだ。
大きな、剣筋で硬くなった掌。
「……冨岡様?」
「…………すまない……手を煩わせた」
「謝らないでください。私は、お役に立てるのが嬉しいのです」
「お前は……いつも、私の心の内まで踏み込んでくる」
義勇は視線を落とし、巻かれたばかりの白い包帯を見つめた。
そこには、自分では決して施せない、丁寧で優しい労わりの形があった。
「……不思議だな。お前に手当てされると、傷よりも、胸の奥が騒がしくなる」
「それはっ、……きっと、お腹が空いているせいですよ」
は照れ隠しに微笑み、彼の手に自分の手を重ねた。
「今夜は、身体が温まるお粥にしましょうか。それとも、大好物の鮭大根にします?」
「…………鮭大根を、頼む」
「承知しました。腕によりをかけてお作りしますね」
少しだけ、彼の手の力が強まる。
「死」が隣り合わせの殺伐とした日々の中で、が与える温もりだけが、今の彼を現世に繋ぎ止める確かな鎖だった。