第10章 ※地獄の底で 君の名前を呼んだ【ヒロアカ 轟焦凍】
「犯人どもは、お嬢様学校の特権を笠に着た女子生徒とその取り巻きの男たちらしい。親が政治家や重役だから何をやっても揉み消せると……バーニンは『警察の管轄だ』と抜かしたが、俺は納得いかねぇ。法が守れないなら、俺がこの手で一人ずつ、そいつらの息の根を止めに行く」
轟の左半身から、かつてないほど激しく、どす黒い熱を孕んだ炎が吹き上がった。
その瞳に宿っているのは、ヒーローとしての正義ではなく、愛する者を地獄へ突き落とした者たちへの、剥き出しの狂気と執着だった。
「親父……お前が培ってきた、その醜いコネも、権力も、全部使え。こいつらを社会的に、徹底的に抹殺しろ。できないってんなら、俺がヒーローを辞めてでも、刺し違えて終わらせる」
その凄まじい決意に、流石のエンデヴァーも気圧されたように言葉を失った。
息子がこれほどまでに感情を爆発させ、一人の女のために全てを捨てる覚悟を見せるなど、想像だにしていなかった。
「……本気、か。それがどれほどの茨の道か分かっているのか」
「地獄なら、俺がもう一度焼き払ってやる」
轟の揺るぎない眼光。
そこに宿る決意の重さを悟り、エンデヴァーは深い溜息と共に椅子に深く身を沈めた。
「……分かった。これほどまでの熱を見せられては、退くわけにはいかん。バーニン、関わった連中のリストを洗い出せ。政治家だろうと重役だろうと関係ない。俺が培ってきた全ての権力とコネクションを使って、加害者の親族ごと、表舞台から完全に抹殺してやる。二度と、その子の前にゴミを近寄らせん」
父の重苦しい宣言を聞き、轟はようやく炎を収めたが、その瞳に宿る冷気は消えない。
彼は、小さく丸まっているを再び連れ出した。
「行くぞ、。……お前を傷つけた世界は、俺が全部変えてやる」
彼女を連れ去る轟の背中は守護者というよりは、獲物を決して離さない獣のそれであった。
裏側で動き出した「力」が、彼女を弄んだ者たちを一人ずつ、確実に深淵へと引きずり込んでいく。
その間に轟は自分で彼女のナカに残された汚れを、一つずつ丁寧に「上書き」していく決意を固めていた。