第10章 ※地獄の底で 君の名前を呼んだ【ヒロアカ 轟焦凍】
轟はを連れエンデヴァーの事務所へと向かい、応接室に呼び出しておいたバーニンの前へと彼女を連れて行く。
「どうしたんだいショートくん、そんな物騒な顔して……。その子、ボロボロじゃないか」
バーニンの問いに轟は何も答えず、奪い取ったスマホの一つを起動させた。
無機質な画面の中で男たちに蹂躙され、卑猥な言葉を強要されるの姿が流れる。
「……これに関わった全員を、今すぐ拘束してくれ」
低い地を這うような轟の声に、動画を数秒確認したバーニンの顔から余裕が消えた。
だが、彼女はすぐに苦渋の表情を浮かべて首を振った。
「ショートくん、気持ちはわかる。……だが、これは『個性犯罪』じゃない。ただの暴行、恐喝、強姦だ。……警察の管轄だよ」
「……警察に突き出せば、この動画が表に出る可能性だってある。事務所の力で、内々に片付けろと言ってるんだ」
食い下がる轟に、バーニンはさらに残酷な現実を突きつけた。
「相手だが……この女たちの親はただの金持ちじゃない。政治家の娘や、大企業の重役の身内……要は、裏で警察やメディアを動かせる連中が揃ってる。お嬢様学校ってのは、そういう『力』の吹き溜まりなんだよ」
轟の拳が、みしりと音を立てて握りしめられる。
「ヒーローが、悪人を見逃せってのか」
「そうじゃない! 下手に手を出せば、この子の動画が本当に世間にバラ撒かれる。親の力で揉み消されるどころか、被害者であるあの子の方が『同意の上だった』と泥を塗られるのがオチだ。……ショートくん、今やるべきは、怒りに任せて暴れることじゃない」
バーニンの言葉は正論だった。
だが、震え続けるを前にして、その正論は何の救いにもならなかった。
「……権力があれば、何をしてもいいってのか。あいつらが、こいつの尊厳をあんなに踏みにじったのに……」
「ショートくん、落ち着け。……エンデヴァーなら、あるいは……」
バーニンの言葉が途切れる。
轟は、自身の内側から溢れ出す、氷と炎の制御しきれない衝動を感じていた。
今の轟にとっては少女を救えるのであれば、なんでも使うつもりだった。