第10章 ※地獄の底で 君の名前を呼んだ【ヒロアカ 轟焦凍】
現実ではあんなに必死に抑えた理性の壁を、夢の中の自分はやすやすと踏み越えていく。
「焦凍、くん……」
耳元で甘く囁く彼女の声を合図に、欲望のままに彼女を暴き、その奥深くまで突き進む。
「焦凍、くん……っ、ぁっ、……あ……ああぁぁぁっ!」
絶頂に悶えるを、獣のような本能のままに突き上げた。
彼女の柔らかな肉の壁を割り進み、最奥の熱に辿り着いた瞬間、我慢し続けてきた精が爆発するように解き放たれた。
「……っ、……!」
激しい快感と共に跳ね起きると、部屋の中はしんと静まり返っていた。
月明かりが差し込む中、自分の下半身に広がる不快なぬるま湯のような感覚に、轟は呆然と立ち尽くした。
「……夢、か」
額の汗を拭い、ぐちゃぐちゃになった下着を見つめる。
十年間、誰に教わるでもなく凍らせてきたはずの感情が、彼女という熱を得て、制御不能なほどに溶け出していた。
(準備をしておけ、なんて……)
よくあんなセリフが吐けたものだ。
一番余裕がないのは、自分の方だった。
轟は溜息をつき、着替えを求めて重い腰を上げた。
次に彼女に会う時、自分は本当に「止まれる」のだろうか。
夜明け前の静寂の中で、轟はただ一人の女に狂わされていく己の未熟さと、それを上回るほどの独占欲に、激しく身を焦がしていた。
雄英高校へと続く緩やかな坂道。
轟は偶然鉢合わせ、隣を歩く緑谷の快活な分析も耳に入らないほど、深い思考の泥濘に沈んでいた。
昨夜の残像が、瞼の裏に焼き付いて離れない。
夢の中で何度もその名を呼び、彼女の最奥を己の熱で満たした、あの狂おしいほどの快感。
「……轟くん? 轟くんってば!」
「――あ、……なんだ?」
何度も呼びかけられ、ようやく轟は視線を向けた。
緑谷は心配そうに眉を下げて、彼の顔を覗き込んでいる。
「さっきからずっと上の空だよ。何か悩み事? 体育祭の疲れが取れてないのかな」
「いや……疲れじゃない。……今朝、夢精した」
「…………えっ?」
あまりに淡々と、それでいて爆弾のような告白を投げつけられ、緑谷は歩みを止めて固まった。
顔が急速に赤く染まっていく。