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夜の秘め事【裏夢の短編集】【R18】

第10章 ※地獄の底で 君の名前を呼んだ【ヒロアカ 轟焦凍】


遠巻きにそれを見ていたの足が、すくむ。
あの中に飛び込んでいけるはずがない。
あそこにいるのは、テレビの中の遠い世界の住人としての「轟焦凍」だ。


(……やっぱり、私なんかが隣にいたら、焦凍くんの迷惑になるんじゃ……)


昨夜の熱い口付けすら夢だったのではないかと思えるほどの格差。
が絶望に目を伏せ、踵を返そうとしたその時だった。


「――どいてくれ。邪魔だ」


「……え?」


氷結の個性よりも冷徹な、轟の声が校門に響き渡った。
「邪魔だ」と言い放たれた彼女は、完璧に作り込まれた笑顔を貼りつかせたまま凍りついた。
彼女の人生において、これほどまでストレートに拒絶された経験などなかったのだろう。
周囲の女子生徒たちが息を呑む中、轟は女の横を平然と通り過ぎた。


「!」


その瞬間、彼の表情が劇的に変わった。
先ほどまでの冷徹な氷の仮面が剥がれ落ち、幼い子供のように輝く、熱を帯びた瞳。
轟は人だかりを割るようにして、校門の隅で立ち尽くしていたの元へと駆け寄った。


「焦凍、くん……」


「待たせたな。……少し、目立ちすぎたか?」


そう言って、彼は周囲の好奇の視線など意に介さず、当然のようにの小さな手を包み込んだ。
静まり返っていた校門前が、爆発したようなざわめきに包まれる。
中でも、メンツを丸潰しにされた女は怒りを抑え込みながらも静かに轟に問いかけた。


「ちょっと、轟さん! 冗談も大概になさって。……そんな、どこの馬の骨とも知れない小娘と、貴方はどういう関係だっておっしゃるの?」


その問いに、轟は歩みを止めることなく、肩越しに冷淡な視線を投げた。


「……見て分からないか。俺の恋人だ」


さらりと、何でもない事実を告げるような口調だった。
だがその言葉の破壊力は凄まじく、周囲からは悲鳴に近い驚愕の声が上がる。
あの「氷の貴公子」に、これほど執着する相手がいたこと、そしてそれがクラスで浮いている「庶民」の少女であったことへの衝撃。


「こ、恋人……!? 嘘よ、そんなの認めないわ。釣り合いというものがあるでしょう?」


女の言葉を背中に受け流し、轟はの手を引いて歩き出した。



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