• テキストサイズ

夜の秘め事【裏夢の短編集】【R18】

第10章 ※地獄の底で 君の名前を呼んだ【ヒロアカ 轟焦凍】


それは、ありふれた休みの日だった。
家のテレビに映し出されていたのは、日本中が熱狂する雄英体育祭の生中継。
は吸い寄せられるように画面を凝視した。


実況の声が響く。
画面の向こう、氷の壁を背負って立つ少年。
その左側に刻まれた火傷の痕と、冷徹なまでに研ぎ澄まされた瞳。



(焦凍くん……?)



モニターに映し出された彼の顔を見た瞬間、は息を呑んだ。
整った顔立ちの左側に、痛々しく刻まれた大きな火傷の痕。
かつて公園で、自分が絆創膏を貼ってあげていた小さな生傷とは、あまりにかけ離れた傷だった。



(どうして……あんな……)



心臓の鼓動が早まる。
理由も分からず、ただ、彼が過ごしてきた十年という月日の残酷さが、その一箇所に凝縮されているように見えて、涙が溢れそうになった。
幼い少年の面影は鋭い青年のそれへと変えていた。
彼は、ヒーローの最高峰を目指す場所にいたのだった。











翌日、学校の空気はいつもより増して浮ついていた。
お嬢様学校といえど、多感な時期の女子生徒たちにとって、昨日の体育祭は格好のゴシップネタだった。


「ねえ、見た? 一年のあの轟って子、凄かったわよね」

「優勝した爆豪って子はちょっと怖すぎるけど、轟くんは別格。なんていうか、王子様みたい」

「しかもNo.2ヒーロー、エンデヴァーの息子でしょう? 将来性も抜群じゃない」


教室のあちこちで、彼の名前が飛び交う。
イケメンだ、家柄が素晴らしい、才能に溢れている。
彼女たちが無責任に並べる称賛の言葉を聞くたび、の胸の奥がキリリと痛んだ。



(みんな、何も知らない癖に……)



彼がどれほど過酷な訓練に耐えていたか、誰も知らない。


知っているのは、あの公園で彼の手を握った自分だけだという自負と、あまりに遠くへ行ってしまった彼への焦燥感が混ざり合う。




/ 270ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp