第10章 ※地獄の底で 君の名前を呼んだ【ヒロアカ 轟焦凍】
それから数ヶ月が経った。
無情にも、別れの時は突然訪れる。
親の仕事の都合による急な転居に、幼いには拒否権はなかった。
引っ越し当日、荷造りを終えたトラックが走り出す。
彼女は無理を言って、最後にもう一度だけあの公園に立ち寄ってもらった。
冬の入り口の冷たい風が、枯れ葉を巻き上げる。
ベンチも、滑り台も、あの日交わした「お嫁さん」の約束も、すべてが置き去りにされていく。
「焦凍くん……バイバイ」
届くはずのない言葉を風に乗せ、は無理やり笑顔を作った。
溢れそうになる涙を堪え、彼女は静かに公園を後にした。
二人の距離が決定的に引き裂かれたことを、まだ幼い二人は本当の意味では理解していなかった。
焦凍が氷のような瞳で世界を見つめ、がその名前を胸の奥に閉じ込めて成長していく――。
再会の兆しすら見えない、あまりに孤独な決別だったーー。