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夜の秘め事【裏夢の短編集】【R18】

第10章 ※地獄の底で 君の名前を呼んだ【ヒロアカ 轟焦凍】


「……約束なんて、意味なかったんだ」


鏡に映る、自分の左側の火傷を見るたびに思い出す。
自分は「傑作」として作られた道具に過ぎないのだと。
の笑顔も、公園のベンチで感じた手の温もりも、氷の下に深く沈めてしまった。
そうしなければ、この家で生きていくことはできなかったから。


少年の瞳から色彩が消え、ただ冷徹な拒絶だけが宿るようになるまで、そう時間はかからなかった。












公園のブランコが、誰も乗せていないのに小さく揺れていた。
夕暮れ時、はいつものようにそこで待っていた。
昨日も、その前も、焦凍は来なかった。
彼が父に厳しく鍛えられているのは知っていたが、これほど長く姿を見せないのは初めてだった。

胸を騒がせる不安に耐えきれず、彼女は意を決して轟家の重厚な門を叩いた。



「あの、焦凍くんは……」



現れたのは焦凍ではなく、その父であるエンデヴァーだった。
燃え盛るような威圧感を放つ男は、小さな子供であるを、塵でも見るかのような冷徹な目で見下ろした。



「焦凍は今、ヒーローとしての英才教育を受けている。貴様のような出来損ないの子供とままごとをしている暇などないのだ」


「でも、約束したんです。ずっと一緒にいるって……!」



必死に食い下がるに対し、男は鼻で笑った。



「二度と息子に関わるな。お前とは、住む世界が違うのだ。……失せろ」



冷たく言い放たれ、重い門が閉ざされる。
その衝撃は、彼女の小さな心を粉々に砕くには十分すぎた。


は泣きながら家へと走り、それからも毎日、祈るような気持ちで公園に通い続けた。
ひょっとしたら、あの怖いおじさんの目を盗んで、焦凍が来てくれるかもしれない。


だが、砂場に落ちる影が長くなるばかりで、焦凍の姿は一度も現れなかった。




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