第9章 魅惑的な太腿をもつ君と♡ 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「……クロ。さんのこと、変な目で見てるでしょ」
「ぶっ……! おま、研磨、何言って……!」
「図星なんだ」
研磨は立ち上がり、黒尾の耳元でだけ聞こえるような小さな声で続けた。
「……頭冷やしたほうがいいよ。今のクロ、さんを食い散らかしそうな顔してるから。……すごく、気持ち悪い」
「……言い方ぁ!!」
黒尾は声を上げたが、研磨の指摘はあまりにも正確だった。
一度意識しだすと、の動きに合わせて揺れるポニーテールや、ユニフォームから覗く太もも、汗で肌に張り付いたシャツのラインが、すべて今朝の「あの光景」に繋がってしまう。
「……あー、クソ。監督!すみません! 5分……、5分だけ外の空気吸ってきます!!」
黒尾は耐えきれず、逃げるように体育館を飛び出した。
夕暮れの冷たい風に当たりながら、彼は激しく打つ心臓を押さえる。
「……マジで、俺どうしちまったんだよ……」
「――ッ、!!」
研磨の予言通り、少しだけ頭を冷やしてコートに戻って練習を再開していた黒尾だったが、その集中は最悪の形で破られた。
隣のコートから響いた、短い悲鳴と鈍い音。
がボールを追って転倒し、足首を押さえたままうずくまっている。
「おい、黒尾! まだ練習中……!」
「悪い、夜久! すぐ戻る!」
監督やチームメイトの制止も聞かず、黒尾はコートの仕切りを越えてのもとへ駆け寄った。
「! おい、見せろ。どこやった」
「……く、黒尾くん……。大丈夫、ちょっと捻っただけだから……っ」
顔を歪めながらも強がる。
だが、その瞳には痛みと、昼間の拒絶による不安が混じり合って、今にもこぼれそうな涙が溜まっている。
「大丈夫なわけねーだろ。……腫れてきてんじゃねーか」
黒尾は迷わず彼女の膝裏に腕を通し、ひょいと横抱きに抱え上げた。
「えっ、ちょっ、黒尾くん!? みんな見てるよ……!」
「見てろよ別に。……先生、俺が保健室連れて行きます。アイシングしてくるんで」
女子部の顧問に断りを入れると、黒尾は一度も彼女を下ろすことなく、静かな廊下へと連れ出した。