第8章 可愛い猫の誘惑♡ 【僕のヒーローアカデミア 相澤消太】
「おーおー! 相澤、お前なんだよその顔! 溶けてんぞ!」
突如、横から耳をつんざくようなハイテンションな声が響いた。
マイクが身を乗り出しニヤニヤしながら相澤の顔を覗き込んでいる。
「……うるさい。鼓膜が震える」
「いやいや隠したって無駄だぜ! さっきの生徒からのクッキー、そんなに大事そうに食うか? 普段甘いもん自分から食わねぇだろ、お前」
「腹が減ってただけだ」
相澤は瞬時に無表情を作り箱をしまった。
「嘘つけ! 今、一瞬だけ『幸せの絶頂』みたいな顔してたぜ? もしかして……あれか? 義理じゃなくて『マジ』なやつ混ざってたか?」
「……妄想が激しいぞ。ただの教え子からの差し入れだ。それ以上でも以下でもない」
相澤は淡々と書類に目を落とし、追求をかわそうとする。
心臓の鼓動がわずかに速くなったのを、必死に悟られないように。
「へぇー? じゃあ、その箱の、俺にも一つ分けてくれよ。美味そうじゃん」
「……断る」
「 独り占めかよ!」
マイクの爆笑が響く中、相澤は机の下で、隠したチョコの箱をそっと指先でなぞった。
(……卒業まで、あと少し。それまでは、この『秘密』を死守しなきゃならんからな)
相澤は内心で小さく溜息をつき、早く彼女に「美味かった」と伝えるための言い訳を考え始めた。