第7章 ※宿儺は伏黒の女を食い散らかしたい 【呪術廻戦 伏黒恵】
高専の男子寮に戻り、自室のドアを閉めた途端、押し殺していた静寂が虎杖にのしかかった。
シャワーを浴びて熱を冷まそうとしたが、目を閉じれば暗闇の裏側に、先ほど見た光景が鮮明に焼き付いている。
「……クソ、忘れろよ、俺」
ベッドに倒れ込み、腕で目元を覆うけれど、脳裏に浮かぶのは、ソフトクリームを口に含んだの、白く濡れた舌先だった。
アイスを舐めとるたび、艶やかに湿って光るその動き。
自分に向けられた「悠二くん」という無防備な微笑み。
伏黒が彼女の手首を掴み、その肌に直接舌を這わせた瞬間の、の吐息。
(伏黒は、知ってるんだな……あいつの、あんな顔)
友人への猛烈な嫉妬と、彼女への抑えきれない渇望が混ざり合い、下腹部に重苦しい熱が溜まっていく。
一度意識してしまえば、もう逃げ場はなかった。
虎杖は観念したようにズボンの中に手を差し込み、熱を帯びた自身を握りしめた。
「はぁっ……、……っ、……」
口の中で、誰にも聞かせてはいけない彼女の名前を、掠れた声でこぼす。
の幻影を追いかけるように、手を動かす速度を上げた。
シーツを掴む指先に力がこもる。
今、彼女の細い指先を握っているのが自分だったら。
あの白い肌を、伏黒ではなく自分が汚していいのなら。
「っ……あ、……っ、」
昂る熱が限界に達し、頭が真っ白になる。
激しい拍動とともに指先まで熱が突き抜け、虎杖は深い溜息とともにシーツに沈み込んだ。
静まり返った部屋に、自分の荒い呼吸の音だけが響く。
放出した後には、心地よい倦怠感ではなく、やり場のない罪悪感と空虚さだけが残った。
「……最低だな、俺」
天井を仰ぎ、独りごちる。
どんなに想っても、どんなに熱を吐き出しても、彼女は隣の部屋にいる伏黒のものだ。
その事実が、呪いのように胸に深く突き刺さる。
だが、その隙を「奴」は見逃さなかった。
「――ククッ、随分と惨めな顔をしているな、小僧」
脳内に響く、嘲笑を孕んだ声。
虎杖が反応する間もなく、どす黒い呪力が全身を駆け巡り、虎杖の意識が急激に遠のき、入れ替わるようにして、その瞳に紅い光が宿る。
虎杖の体を乗っ取った宿儺は、ゆっくりとベッドから起き上がり、顔に刻まれた呪紋を指でなぞりながら低く笑ったーー。