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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー

第14章 へなちょこな彼は彼女を愛したい 【REBORN ディーノ】



「いのり? 顔色が悪いけど、やっぱり疲れちゃったか?」


心配そうに顔を覗き込んでくるディーノの瞳は、どこまでも真っ直ぐで優しい。


「……いえ。大丈夫です。本当に、ここに来られて良かったなって、思っていただけですから」


精一杯の微笑みを作ってそう答える彼女の横顔を、ロマーリオは眼鏡の奥で静かに見守っていた。
主人の不器用な優しさと、少女の心に芽生え始めた小さな変化の、その両方を彼は誰よりも早く察していた。









イタリアでの生活は、驚くほど穏やかに過ぎていった。
特にやることもないいのりにとって、日課となったのはイタリア語の勉強だ。
時間がある時はディーノが横に座り、身振り手振りを交えて根気強く教えてくれる。
彼が忙しい時は、ロマーリオや日本語を理解する部下たちが交代で教師役を務めた。


「……そう、発音が綺麗だな、いのりは!」


ディーノに褒められるたび、胸の奥が温かくなる。
禪院の屋敷にいた頃、誰かが自分の努力を認め、優しく微笑んでくれることなんて一度もなかった。
ここでは、ただ言葉を一つ覚えるだけで、世界が色鮮やかに広がっていく。
そんな当たり前の幸せに、いのりは心の底から救われていた。



そんなある日の午後、書斎で本を広げていたいのりの元に、ディーノが少し改まった表情で現れた。


「いのり、少し話があるんだ。近いうち、野暮用で日本に行くことになった」


「日本」その単語を聞いた瞬間、いのりの指先がわずかに震えた。
あの忌まわしい記憶、直哉の冷酷な瞳、そして自分を縛り付けていた因習。
それらが一気に脳裏をよぎる。


「……君さえ良ければ、一緒についてこないか? 無理にとは言わない。でも、もし踏ん切りをつけたいなら、俺が隣にいる」


ディーノの瞳は、どこまでも誠実だった。
自分を一人で残していく不安と、彼女自身の過去に向き合う機会を天秤にかけているのが分かった。
いのりは静かに自問した。
このままイタリアで夢を見続けることもできる。

けれど、もしまたあの光が起きたら。

もし、自分を縛る「呪縛」がまだ日本に残っているとしたら。



「……行きたい、です。ディーノさんと一緒なら」



彼女は日本の地に降り立つ事を決心したのだった。



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