禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第14章 へなちょこな彼は彼女を愛したい 【REBORN ディーノ】
丁寧に包まれた下着の紙袋を抱え、店を出ると、そこには手持ち無沙汰にそわそわと歩き回っているディーノの姿があった。
「お、買い物は終わったか? 気に入ったのはあった?」
「はい、ありがとうございます」
まだ少し顔を赤らめているディーノと合流し、三人は近くのテラス席があるカフェへと足を運んだ。
石畳の広場に面したその場所は、心地よい風が吹き抜けていく。
運ばれてきたカプチーノを一口飲み、買い物の疲れがじんわりと解けていくのを感じていると、通りがかりの街の人々が次々とディーノに声をかけてきた。
『よう、坊ちゃん! 景気はどうだい?』
『素敵なレディを連れてるじゃないか。お熱いね、ディーノ!』
ディーノはその一人ひとりに親しげに応じ、時には冗談を交えながら笑い合っている。
禪院の屋敷にいた頃の、恐怖で支配する「主従」とは全く違う、温かな信頼関係がそこにはあった。
『おいおい、隣の可愛いお嬢さんは新しい彼女か?』
『全くだ。こんな美人は、お前にはもったいないくらいだぜ!』
年配の店主や、買い物帰りの婦人たちが口々にそう冷やかす。
イタリア語の詳細は分からずとも、「フィダンツァータ」という単語と彼らの茶目っ気のある視線で、何を言われているのかは何となしに分かった。
『はは、よせよ! 彼女は、その……大切な客なんだ。変なこと言って困らせるなよ』
ディーノはどこか照れくさそうに頬を掻きながら、必死に否定している。
ロマーリオに助けを求めるような視線を送るが、ロマーリオは『やれやれ』といった風に肩をすくめて、エスプレッソを啜るばかりだ。
(……否定、されちゃった)
反射的にそう思った瞬間、いのりの胸の奥に、チクリとした小さな痛みが走った。
否定されるのは当たり前だ。
出会ってまだ一日。
自分は身寄りのない、ただの居候なのだから。
それなのに、彼に「違う」と言い切られることに、なぜか寂しさを感じている自分に驚いた。
あんなに酷い目に遭わされて、もう男の人なんて信じられないと思っていたはずなのに。
ディーノの差し出す温もりに、いつの間にか心が甘え始めていたのかもしれない。