禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第14章 へなちょこな彼は彼女を愛したい 【REBORN ディーノ】
「これも何かの縁だ。いのりさえ良ければ、帰りたくなるまでここに居ていい。好きなだけゆっくりしていけ」
ディーノは事も無げにそう言った。
あまりに真っ直ぐな歓迎に、いのりは戸惑いを隠せない。
禪院の家では「胎」として、あるいは出来損ないの道具として扱われるのが日常だった。
誰かに居場所を望まれることなど、一度もなかったのだ。
「いいんですか……? 私、何の役にも立てないのに」
「役に立つとか立たないとか、そんなのは関係ない。君が笑って過ごしてくれるのが一番なんだ」
その言葉が嘘には聞こえなかった。
ここなら、あの息の詰まるような呪縛から離れて、自分らしく息ができるかもしれない。
いのりは震える声で、小さく、けれどはっきりと告げた。
「……お願いします。ここで、お世話にならせてください」
その日の夜、屋敷の一角で歓迎会を兼ねたプチパーティーが開かれた。
広間のテーブルには、見たこともないほど彩り豊かなイタリア料理が並んでいる。
香ばしい肉の焼ける匂い、新鮮なトマトとチーズの香り。
そして何より驚いたのは、そこに集まった男たちの熱狂的なムードだった。
『ボスの連れてきたレディに乾杯!』
『ようこそ、シチリアへ! 美味いもんいっぱい食えよ!』
屈強な体つきをした黒服の男たちが、代わる代わるいのりに話しかけてくる。
言葉は全く分からないが、それでも、彼らが自分を「女」として品定めしているのではなく、一人の仲間、あるい客として歓迎していることはその明るい表情から伝わってきた。
「みんな、いのりが驚いてるだろ。少しは落ち着けよ」
ディーノが苦笑しながら男たちを嗜めるが、彼自身もどこか嬉しそうだ。
男たちに囲まれ、次々に皿に料理を盛られる。
初めて口にする本場のパスタは、驚くほど美味しかった。
言葉の壁はある。
文化も、住む世界も違う。
けれど、飛び交う笑い声と、ディーノが時折見せる穏やかな眼差しに包まれて、いのりの心は少しずつ溶けていく。
(ここなら、本当に……)
美味しいご馳走と、自分を歓迎してくれる人々の熱気。
禪院での地獄のような日々が遠い幻であったかのように、いのりは久しぶりに心の底から、小さな微笑みを浮かべた。