禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第14章 へなちょこな彼は彼女を愛したい 【REBORN ディーノ】
「落ち着いたか? ……改めて聞きたいんだ。君は、どうしてあの路地裏にいたんだ?」
いのりはカップを握りしめ、ポツリポツリと話し始めた。
「わからないんです。私は、さっきまで日本にいました。禪院の屋敷に……。でも、突然光に包まれて、気づいたらあそこに」
「さっきまで日本に……? ロマーリオ、聞いたか?」
後ろに控えていたロマーリオが、眉をひそめて頷く。
『ええ。密入国の記録もありませんし、この短時間で極東からここへ移動するのは、物理的には不可能です』
「……だよな。君、名前は?」
「禪院いのり、です」
「そうか、いのり。……日本にいたっていうのは、本当なんだな? 冗談や夢じゃなくて」
いのりは深く頷いた。
嘘を吐く理由も、余裕もない。
「信じられないかもしれないけど……あそこで、直哉様さんに酷いことをされて。逃げたいって、強く願った瞬間に、あの場所に飛ばされていました」
ディーノは驚いたように目を見開いた後、ロマーリオと顔を見合わせた。
「瞬間移動、か……。不思議なこともあるもんだな。でも、君自身も何が起きたか分かってない、と」
「はい。ここがイタリアだなんて、今でも信じられなくて」
俯く彼女の手に、ディーノの大きな手が重なった。
「いいよ、信じられなくて当然だ。でも、これだけは本当だ。君はもう、その『ナオヤ』とかいう奴に怯える必要はない。ここは俺の縄張りだ。何があっても、俺が君を守る。……いいな?」
「縄張り……?」
ふと漏れたその言葉に、ディーノは少しだけ面食らったような顔をした。
だがすぐに、いつもの人懐っこい笑みを浮かべて肩をすくめる。
「ああ。ここら一帯は、俺たちキャバッローネファミリーが治めてる場所なんだ。俺は一応、その十代目ボスをやってる」
いのりは、持っていたカップを落としそうになった。
耳を疑い、目の前の青年を凝視する。
金髪で、整った顔立ちの優しそうな雰囲気の男性。
「マフィアの……ボス……?」
「はは、そんなに驚くことか?」
「事実ですよ、いのりさん。この人が、我らキャバッローネの誇るボスです」
後ろに控えていたロマーリオが、眼鏡の奥の目を細めて淡々と補足した。