禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第13章 呪われた彼は彼女に救われたい 【銀魂 土方十四郎】
それからの屯所は、地獄のようだった。
伊東が実権を握り、真選組の空気はさらにどろりと澱んでいった。いのりは、土方がいつ戻ってきてもいいように、彼の部屋を毎日磨き上げ、なけなしの呪力を込めた御守りを握りしめて祈った。
けれど、澱みは深まるばかりだった。
そんな彼女の元へ、最悪の知らせが届く。
「山崎さんが……亡くなった……?」
いつも気さくに声をかけてくれ、土方の異変についても一緒に悩んでくれた監察の山崎退。
彼の訃報は、残された隊士たちの士気を完全に粉砕した。
悲しみに暮れる暇さえ、この世界は与えてくれない。
その夜、屯所内に怒号と刃の交える音が響き渡った。
伊東派と近藤派——真選組が二つに分かれ、組織を、そして局長の命を奪い合う内乱が始まったのだ。
「近藤さんを……近藤さんを守って……!」
いのりは、武器を持って走り出す隊士たちの背中を見送るしかなかった。
呪力も、剣術もない自分。
直哉に踏みにじられていた頃と変わらない、無力な自分。
(土方さん……今、どこにいるんですか……。貴方の守りたかった場所が、もう……)
遠くで火の手が上がる。
夜の闇に消えていく隊士たちの背中を見つめながら、いのりはただ祈り続けた。
あの妖刀の呪いを、澱んだこの空気を、全てを斬り伏せて戻ってくる「鬼の副長」の姿を。
窓から差し込む赤い月光が、彼女の頬を伝う涙を無情に照らしていた。
「三次元という妥協に甘んじた偶像など、拙者の『嫁(二次元)』の足元にも及ばぬわ! 結婚? 愚問! 結ばれぬ運命(さだめ)だからこそ、愛は不滅の純粋培養を遂げるのでござるゥゥ!」
「何をふざけたことを! そもそも二次元は実在しない、つまり戸籍すら作れないでしょうが! お通ちゃんは実在する、でも手の届かない星だからこそ尊いんです! 」
一方、真選組を出て行った土方は、テレビ画面の中で二次元オタクのトッシーとして、アイドルオタクの新八と『推しとは一生結婚できないという絶望』をいかにして「美学」に昇華させるかという、救いようのない議論を繰り広げていた。
かつての「鬼の副長」の矜持など、微塵も感じられない。