禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第13章 呪われた彼は彼女に救われたい 【銀魂 土方十四郎】
その夜、屯所は大広間で宴会が開かれていた。
参謀として復帰した伊東鴨太郎を歓迎するための催しだ。
酒の匂いと笑い声が飛び交う中、いのりは酒を運んだり、料理を並べたりと忙しく立ち働いていた。
「おや、彼女が噂の『迷い人の小鳥』さんかな? 実に慎ましやかで美しい」
眼鏡を光らせ、優雅に扇子を振る伊東がいのりに声をかけた。
「あ……伊東様、初めまして。いのりと申します」
「丁寧な挨拶だ。土方君のような無骨な男の側に置くには、少々勿体ない気がするね」
伊東の言葉は丁寧だが、その瞳の奥には冷徹な計算が透けて見える。
そして何より、この大広間全体の空気がおかしい。
隊士たちはいつも通り騒いでいるはずなのに、どこか空気が重く、澱んでいる。
「土方さん……」
いのりは、上座に近い場所に座る土方を見た。
彼はいつもなら伊東と火花を散らすはずなのに、どこか様子がおかしい。
いのりには見えていた。
土方の肩に、あの刀から伸びた黒い靄が、まるで鎖のように絡みついているのが。
(やっぱり、あの刀のせいだ……。でも、私にはあれを祓う力なんてない……)
伊東の帰還という組織の転換点。
そして、土方を蝕み始めた奇妙な呪い。
華やかな宴の裏側で、真選組を飲み込もうとする巨大な闇のうねりを、いのりだけが敏感に感じ取っていた。
「……嫌な予感がする。……凄く、嫌な……」
いのりは震える手で盆を握りしめ、ただ立ち尽くすことしかできなかった。
あの日以来、土方の変貌は加速していった。
かつて「鬼の副長」と恐れられた厳格な面影は消え、土方は自室に引きこもっては、得体の知れない美少女のフィギュアやポスターを買い漁るようになっていた。
「……あ、あの、土方さん。お食事、ここに置いておきますね」
「……今は大事な深夜アニメの実況中なのでござる。拙者に構うな、この三次元女が」
部屋から返ってきたのは、かつての低い美声ではなく、鼻にかかったような、粘りつく声だった。
いのりは部屋の隅に置かれた、山のようなアニメグッズを見て唇を噛んだ。