禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第13章 呪われた彼は彼女に救われたい 【銀魂 土方十四郎】
真選組の屯所にいのりが来てからというもの、そこは文字通り「掃き溜めに鶴」状態となった。
埃っぽかった廊下は磨かれ、男臭かった空気には微かに石鹸の香りが混じる。
何より、隊士たちの胃袋を掴んだ彼女の料理は、殺伐とした男世帯に劇的な変化をもたらしていた。
「おい……今日の味噌汁、出汁が効いてて最高じゃねーか」
「煮物も味が染み込んでやがる。美味いぜ、これ」
食堂では隊士たちが涙を流しながら飯を掻き込んでいる。
そんな光景を横目に、いのりは甲斐甲斐しくお櫃を運んでいた。
「あ、おかわりありますからね。たくさん食べてください」
「「「はい! ありがとうございますっ!!」」」
軍隊のような返声が響く。
彼女が微笑むたびに、荒くれ者たちの顔がふにゃりと緩んでいく。
掃除を終えたいのりが廊下を歩いていると、曲がり角から次々と隊士たちが現れた。
「あの、いのりさん! これ、非番の時に買ってきたんですけど……良かったら食べてください!」
「こっちも! 街で評判の団子屋のやつです!」
「俺からはこの簪を! あなたの髪に似合うと思って……!」
差し出される包みの山に、いのりは目を白黒させた。
「えっ、あ、あの……こんなにたくさんいただけません! お仕事をしているだけですから」
「いいんです! 掃除のお礼です!」
「俺たちの心のオアシス代です!」
そこへ、騒ぎを聞きつけた土方が通りかかった。
「おい。てめーら、仕事中に何たむろしてやがる」
「あ、土方さん! げ、副長……!」
隊士たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていったが、廊下には収まりきらなかった差し入れの山が残された。
「……たく。どいつもこいつも、鼻の下伸ばしやがって」
土方は呆れたように息を吐き、足元に転がっていた高級そうな菓子箱を拾い上げた。
「いのり。こんなの、律儀に全部受け取らなくていいんだぞ。こいつら、下心が顔に出すぎてやがる」
「でも、皆さんのお気持ちですから……。私、こんなに良くしていただいたことなかったので」
少し困ったように、でも嬉しそうに微笑むいのりを見て、土方は一瞬言葉を詰まらせた。
地獄のような日々を思えば、この騒がしい愛情表現も、彼女にとっては救いなのかもしれない。