禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第13章 呪われた彼は彼女に救われたい 【銀魂 土方十四郎】
いのりは戸惑った。
ここは恐らく自分の知る日本ではない。呪霊も、禪院家も、直哉もいない世界。
正直に話したところで信じてもらえるはずがない。
「名前は、禪院いのり……です。でも、犯人のことは……言えません」
「何? 隠す必要なんてねーんだぞ。真選組が必ず捕まえて——」
「……いないんです」
いのりは震える指先でシーツを握りしめた。
「あの人は……直哉さんは、もうこの世界にはいないんです。私、あそこから逃げたくて、光に包まれて……気づいたらあの路地裏に」
「……は? 異世界から来たってのか、あんた」
土方は呆れたように息を吐き、煙草を咥えようとして……ここが病院であることを思い出し、忌々しそうに懐へ戻した。
「……普通なら笑い飛ばすところだが、あの路地裏の光を俺も見てる。それに、あんたのその怯え方は……相当な地獄を見てきた顔だ」
土方は少しだけ表情を和らげ、視線を落とした。
「……安心しろ。ここには『ゼンイン』だか何だか知らねェが、女を道具にするような奴はいねェ。もし現れたら、俺がこの刀で叩き斬ってやる」
「……土方さん……」
「当分はうちの息のかかった場所で保護してやる。……腹、減ってねーか? マヨネーズたっぷりの丼でも買ってきてやろうか」
「あ、それは……結構です」
少しだけ、いのりの口元に微かな笑みが浮かんだ。
直哉の支配から切り離されたことを、彼女はようやく実感し始めていた。
翌日、昼下がりの病室。
「……よお。少しは顔色が良くなったな」
戸を開けて入ってきたのは、土方だった。
彼はパイプ椅子に腰掛けると、手元の資料を無造作に懐へねじ込んだ。
実はこの数時間、土方は裏で動いていたのだ。
幕府の戸籍、天人の入国記録、果ては家出人の捜索願いまで。
だが、いのりに関する情報は一文字も出てこなかった。
(……マジで異世界から来たってのか。それとも、よっぽど酷い境遇で存在を消されてたか)
土方はその疑問を心の奥底に沈め、努めて平静な声を出す。