禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第12章 糖尿病の彼は彼女を甘やかしたい 【銀魂 坂田銀時】
似蔵が立ち去り、静まり返った船室。
高杉はゆっくりと歩み寄ると、鎖に繋がれたままのいのりの顎を、細い指先で強引に掬い上げた。
「……な、に……」
「いや。……あの男が、あれほど必死に囲っていた女が、まさか呪い塗れの血を引く壊れ物だったとはな。皮肉なもんだ」
高杉の左目が、いのりの絶望に濡れた瞳を面白そうに覗き込む。
「……銀さんに、何をするつもり……」
「さあな。俺はただ、壊したいだけさ。この世界も……あいつが守ろうとしているその平和な日常もな。……お前というピースが欠けた時、あいつがどんな顔をして狂うのか……楽しみだぜ」
「……銀さんは、負けない。……あなたなんかには……っ」
「くくっ……。いい面だ。いつまでその強気が保てるか、見物させてもらうよ」
高杉は顎を掴んでいた手を離すと、冷たい笑みを残したまま、暗闇の中へと消えていった。
禪院という家に生まれながらに、落ちこぼれの自分はこうして誰かに利用されるだけの存在なのかと悔やむいのり。
(……動けない。……鎖も、呪力すら……今の私には重すぎる……っ)
情けなさと悔しさで涙が零れそうになったその時、頑丈な鉄の扉が、凄まじい衝撃と共に吹き飛んだ。
「……あ」
「…………」
ゆっくり足を踏み入れた銀時の視線が、頭上で鎖に繋がれ、腕から血を流しているいのりを捉えた。
その瞬間、彼の周囲の空気が、凍りつくような冷気へと一変する。
「……銀、さん……」
「……わりぃ。少し遅くなったか」
銀時は静かに歩み寄ると、有無を言わさぬ一閃で、彼女を拘束していた鎖を刀で叩き切った。
支えを失ったいのりの体を受け止め、そのまま胸に抱き寄せる。
「あ、腕の鍵が……っ…」
「いい。……後でぶっ壊す。今は大人しくしてろ」
銀時は周囲を睨みつけながら、彼女を抱えたまま脱出しようとするが、出口を塞ぐように、不気味な脈動をさせる紅桜を携えた似蔵が立ち塞がった。
「くくっ、やはり来たか……。だが、もう遅い。その女の血を吸って、この子はもう完全に目覚めたんでねぇ……」
「……何だと?」
銀時の声が、地を這うほどに低くなる。