禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第12章 糖尿病の彼は彼女を甘やかしたい 【銀魂 坂田銀時】
珍しく余裕のない表情で、銀時は二人に命じた。
桂の安否を追うため、銀時が単独で動き出した、その翌日のことだった。
「……銀ちゃん帰りが遅いネ」
「神楽ちゃん、……あれ? いのりさん?」
振り返ると、ついさっきまでそこにいたはずのいのりの姿が消えていた。
玄関の扉は、音もなく開いている。
「……呪いの、気配。……それも、すごく質の悪い、機械みたいな……」
いのりは、無意識に外へと足を踏み出していた。
培われた鋭い感覚が、この町を覆い始めた「不浄な鋼」の匂いを捉えていたのだ。
銀時に「動くな」と言われていた。
けれど、その匂いの中心に銀時が向かっているのなら、じっとしてはいられなかった。
「待って……。行かないで、銀さん……っ」
夜の闇に紛れ、ふらふらと匂いの元へ吸い寄せられるいのり。
背後から近づく、冷たい鉄の響きに気づいた時には、もう遅かった。
「……おやおや。こんなところに、綺麗な巫女さんが一人。迷子かな?」
闇の中から現れたのは、盲目の人斬り——岡田似蔵。
彼の右腕に纏わりつく異形の刀が、脈打つように赤く光った。
「……あなた、その刀……。そんなの、人間が持っていいものじゃ……っ」
「くくっ……。この子が君に興味を持ったようだ。銀髪の侍を探すまでの、いい暇つぶしになりそうだねぇ」
似蔵の腕が蠢く。
悲鳴を上げる間もなく、いのりの視界はどす黒い闇に飲み込まれていった。
数時間後。
ボロボロになりながらも情報を掴んで万事屋に帰還した銀時を待っていたのは、青ざめた新八と、今にも泣き出しそうな神楽だった。
「……銀ちゃん。……いのりが、いなくなったネ……」
その瞬間、銀時から温度が消えた。
手元に残されたのは、いのりが身につけていた髪飾りの破片だけ。
「……。…………」
銀時は何も言わなかった。
だが、その瞳に宿ったのは、かつて戦場を血で染めた「白夜叉」の昏い光だった。