禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第12章 糖尿病の彼は彼女を甘やかしたい 【銀魂 坂田銀時】
「あ、銀さん……!」
いのりが伸ばしかけた手は空を切り、消えていく銀色の背中を見送るしかなかった。
胸元には、ついさっきまで赤子が吸い付いていた熱い余韻が残っている。
「……追いかけなくていいのかい?」
お登勢の問いに、いのりは力なく首を振った。
「私……どんな顔をして、あの子の隣にいればいいのか、わからなくて」
「……というわけで、そんな不潔な天然パーマのことは忘れて、一緒にダークマターでも作りませんか?」
数十分後。
なぜか志村家に連行されたいのりは、妙が差し出した「炭化した何か」を前に、放心状態で座っていた。
「お妙ちゃん……。どうして、私が悩んでるって……」
「女の勘ですよ。それに、あの男が赤子を連れて歩いてるのを見れば、誰だって察します。あんな浮気野郎、こちらから願い下げです。さあ、遠慮せずにこの卵焼きを食べて、煩悩を焼き払いましょう」
妙は優しく、けれどどこか鋭い視線をいのりに向けた。
「……誰にも言ってなかったんでしょう? 銀さんと、その……仲良くなったこと」
「っ……!? な、なんで……」
顔を真っ赤にするいのりに、妙はふふっと微笑んだ。
「隠せてるつもりなのは本人たちだけよ。……でも、だからこそ辛いわよね。正式な約束もないのに、あんな証拠品(赤ちゃん)を見せつけられて」
「……。…………」
いのりは、膝の上で手をぎゅっと握りしめた。
「私……信じてたんです。あの人の温度も、言葉も。……でも、あんなにそっくりな子を見たら、私が知らなかっただけで、銀さんには別の居場所があったんじゃないかって……」
「いのりちゃん」
「……私、禪院にいた頃、誰からも必要とされていなくて。だから、銀さんがあの日抱きしめてくれた時、初めて自分の居場所を見つけた気がしたんです。……なのに、それが全部勘違いだったらって思うと、怖くて」
堰を切ったように溢れ出した想い。
いのりの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。
「……馬鹿な男……本当に。こんな可愛い子に、こんな顔をさせて」
妙はそっといのりの背中に手を添えた。