禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第12章 糖尿病の彼は彼女を甘やかしたい 【銀魂 坂田銀時】
ある日の朝、寝癖のついた頭をボリボリと掻きながら家を出て、階段を降りてその一歩目だった。
「……あ?」
足元に、見慣れぬ籠。
そしてその中には、朝の眩しい光を浴びて、パチリと目を見開いた小さな命があった。
銀色の天然パーマ。
やる気を感じさせない、死んだ魚のような目。
そして、将来の血糖値を不安にさせるような、ふてぶてしいまでの面構え。
「…………え、鏡? 俺、朝から玄関に鏡置いてあったっけ?」
赤子は銀時を見つめると、まるで見透かしたように「あー、うー」と声を漏らした。
その表情は、どこからどう見ても銀時そのものだった。
「待て待て待て。落ち着け俺。これはドッキリだろ? 隠しカメラどこだ? 誰だ、俺の遺伝子を3Dプリンターで出力して捨ててったバカは!」
銀時は周囲をキョロキョロと見渡すが、通りには静かな朝の空気が流れているだけ。
「……嘘だろ。心当たり……心当たりなんて、ありすぎて逆に絞れねェェェ!!」
かぶき町の朝を切り裂くような銀時の絶叫。
こうして、万事屋史上最大(にして最小)の嵐が、玄関先から幕を開けた。
「……だからよォ、言っただろ。朝起きたら店の前にこれが転がってたんだって。俺の遺伝子の不法投棄じゃねーよ!」
スナックお登勢のカウンター。
銀時の必死の訴えも、お登勢が吐き出した煙草の煙に虚しくかき消される。
「あんたねぇ、その死んだ魚のような目つきに、呪われた天然パーマ。これを見てあアンタの種じゃないって言い張る方が無理があるよ」
「銀ちゃん、往生際が悪いネ。もう逃げられないアル」
(……銀さん。私をあんなに強く抱きしめてくれたのに。あの熱は、全部嘘だったの……?)
胸の奥がキリキリと痛む。
けれど、膝の上で「あー、うー」と無邪気に笑い、自分の指を小さな手で握りしめてくる赤子に罪はない。
むしろ、その手の感触が銀時のそれに似ていることが、余計に愛おしさを募らせてしまう。
「……よしよし。いい子ですね」
いのりがそう呟いた瞬間だった。
お腹が空いたのか、赤子が急にぐずり始め、着物の上から彼女の胸元に猛烈な勢いで吸い付いた。