禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第12章 糖尿病の彼は彼女を甘やかしたい 【銀魂 坂田銀時】
「……だから、すぐ分かっちゃうんです。あそこには、あの場所にあったような『悪意』がなかったから」
(……。…………)
銀時はそれ以上、何も聞かなかった。
彼女の背負ってきたものの重さを、無粋に暴くつもりは毛頭ない。
ただ、その瞳に宿る色が、昨夜自分に縋り付いてきた時の震えと繋がっていることだけは理解できた。
「……。…………よっしゃ!!」
銀時は突然、大きな声を出し、いのりの頭をくしゃくしゃと乱暴に撫で回した。
「え、ちょっ……銀さん!? 髪が……っ!」
「おーい、前を歩いてる食いしん坊ども! 今夜は景気良く、焼肉行くぞォォ!!」
「「ヤキニクゥゥゥ!!?」」
神楽と新八が、弾かれたように振り返る。
「銀さん、本当ですか!? 豚小間じゃなくて、ちゃんと網で焼くやつですか!?」
「牛! 牛がいいネ! 牛を一頭丸呑みにするアル!」
「おうよ、牛でも馬でも好きなだけ詰め込め! ほら、いのりも。湿気た顔してると、網に肉載せる前に神楽に全部食われんぞ」
銀時はニカッと笑い、彼女の背中をポンと押した。
「……銀さん」
「……なんだよ。俺も腹減ってんだ。お前が霊能者だろうが何だろうが、肉を前にすりゃただの『腹ペコの同居人』だろ。ほら、行くぞ」
そのぶっきらぼうな優しさに、いのりの瞳から悲しみの色が少しだけ溶け出していく。
「……はい! 私、たくさん食べます!」
夕焼けに染まるかぶき町の道を、四人の賑やかな足音が駆けていったーー。