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禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー

第12章 糖尿病の彼は彼女を甘やかしたい 【銀魂 坂田銀時】


「ふざけんな! 最後の一撃を入れたのは俺だ! むしろお前、俺を盾にして逃げようとしてただろーが!」
「あぁん!? 誰が盾だ! 俺は背後から奇襲をかけるための高度な戦術を……」
「ただの敵前逃亡だろーが! 報酬どころか、公務執行妨害でぶち込むぞコラ!」
「やんのかコノ野郎! 金払えよマヨ公!!」
「表出ろ天パァァ!!」


夜明け前の屯所で、再び取っ組み合いの喧嘩を始める銀時と土方。
それを見つめるいのりは、深くため息をついた。

「……銀さん、あんなに怖がってたのに、お金の話になると元気なんですね……」
「いつものことアル。幽霊より財布の中身が空っぽになる方が怖いネ」

神楽が隣でケラケラと笑う。
いのりは、騒がしくも活気あるその光景に、禪院では決して味わえなかった「日常」を感じて、少しだけ微笑むのだった。




「……ったく、あのマヨラー。ケチくさいこと抜かしやがって」

銀時は懐にねじ込んだ給料袋(土方が渋々、当初の最低額だけ放り投げたもの)をポンと叩き、大きく伸びをした。

「銀ちゃん! 今夜はご馳走ネ! 酢昆布百箱分は固いアル!」

「神楽ちゃん、それはご馳走って言わないから! でも、ようやくまともな食卓が拝めそうですね……」

はしゃぎながら先を歩く二人を他所に、銀時は隣を歩くいのりへと視線を落とした。
その横顔は、事件が解決したというのにどこか晴れないままだ。

「……なぁ、いのり」

「あ、はい。……銀さん、どうかしましたか?」
「お前さ……さっきのやつ。呪いの気配がどうとか。……そういうのが分かる環境で育ったって、言ってたよな」

銀時の声は、いつになく低く、落ち着いていた。
茶化すような響きはない。
いのりは少し俯き、自分の指先を見つめながら、ぽつりぽつりと話し始めた。

「……はい。私のいた家は、少し……特殊だったんです。人々の恨みや苦しみから生まれる『悪いもの』を払ったり、逆に利用したり……。私は力が弱かったから、役には立たなかったんですけど……。でも、その空気だけは、ずっと吸って生きてきたから……」

彼女の瞳が、ふっと翳る。
それは、ただ過去を語る者の目ではなかった。
深い闇の底で、自分の存在を否定され続けてきた者だけが持つ、痛々しいほどに悲しい色だ。

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