禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第12章 糖尿病の彼は彼女を甘やかしたい 【銀魂 坂田銀時】
「……チッ、分かったよ。離れんなよ、俺のすぐ後ろにいろ」
銀時は少し乱暴に彼女の頭を撫でると、木刀を腰に差し直した。
「行くぞ、お前ら! さっさと片付けて、今夜は美味いもん食うぞ!」
真昼間の太陽が燦々と降り注ぐ真選組屯所。
その正門を、世にも奇妙な一行が通り抜けた。
「……あの、銀さん。やっぱり、この格好は無理があるんじゃ……」
白い着物に烏帽子、手には「除霊」と書かれた怪しい旗。
陰陽師のコスプレをした万事屋一行の中で、いのりだけはおずおずと控えめな巫女装束を着せられていた。
「バカ言え、何事も形から入ってこそのプロだろ。ほら、ザキ何も言ってねー……って、おいザキ、なんで目を逸らしてんだよ」
「……いや、僕が連れてきたってバレたら、副長に切腹させられるんで……」
山崎が冷や汗を流しながら案内した先には、既に限界を迎えた表情の土方と、そして何故かバズーカを磨いている沖田がいた。
「……万事屋。テメェら、そのふざけた格好はなんだ」
土方の額にピキリと青筋が浮かぶ。
「え? 陰陽師だけど。今、かぶき町でナウなヤングにバカ受けの『安倍晴明(あべのせいめい)一派』だけど」
「死ね。吊るせ」
「ちょ、待て待て! 冗談だよ! 形から入った方が霊も油断するかなって!」
結局、万事屋の三人は「ふざけすぎだ」と即座に捕まり、屯所の木に逆さ吊りにされる羽目になった。
「……あの。ええと、はじめまして」
三人が宙吊りでバタバタしている横で、一人取り残されたいのりがぺこりと頭を下げた。
「……あんたは?」
「最近、万事屋で雇ってもらっているいのりと言います。……すみません、うちの銀さんたちが……」
「……チッ、万事屋にこんなまともな娘がいたとはな。……まぁいい。それよりお前さん、そこら中で寝込んでる隊士たちを見て何かわかるか?」
土方が指差した先には、顔を青くして倒れ伏している隊士たちがいた。
いのりは静かに歩み寄り、寝込んでいる隊士の顔や、周囲の空気をじっと見渡した。
彼女は禪院という「呪いの本場」で生きてきた。
もしこれが怨霊や呪いの類なら、もっとどす黒い澱みがあるはずだ。