禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第12章 糖尿病の彼は彼女を甘やかしたい 【銀魂 坂田銀時】
翌朝の万事屋は、なんとも言えない奇妙な空気に包まれていた。
「……銀ちゃん、お前今日、顔がいつにも増して死んでるネ。出がらしのティーバッグみたいな顔アル」
「銀さん、さっきから醤油とソース間違えてますよ。それにいのりさんも、なんでそんなに顔が赤いんですか?」
新八と神楽のジト目が、朝食を並べる二人に突き刺さる。
いのりは昨夜の銀時の熱情と、自分の中に注がれた感覚を思い出してしまい、あわあわと手を動かした。
「そ、そんなことないよ! ちょっと……寝不足なだけで……っ」
「そうだよ、寝不足だよ。夜中にデカい蚊がいてよォ、そいつを退治するのに一晩中格闘してたんだよ。……な?」
銀時が誤魔化すようにいのりに同意を求めると、彼女はさらに顔を赤くして「は、はい! 蚊が、すごくて……っ」と裏返った声で答えた。
(……神楽ちゃんが同じ屋根の下にいるのに、私……あんなに声を出して……っ)
今さらながらの羞恥心に、いのりは爆発しそうなほど狼狽していた。
そこへ、景気よく扉が開く。
「おーい、万事屋! 仕事だ、仕事!」
現れたのは真選組の山崎退だった。
「……なんだザキか。朝から地味な顔見せに来んなよ。うちは今、デリケートな朝食タイムなんだよ」
「デリケートって何ですか! ……正式な依頼ですよ。真選組の屯所に最近、夜な夜な『赤い着物の女』が出るんです」
その言葉に、いのりの肩がびくりと跳ねた。
「赤い、着物の……?」
「ええ。それもただの幽霊じゃない。見た隊士たちがみんな寝たきりになるって話で……」
銀時は「幽霊なんてパスだわ」と鼻をほじりかけたが、山崎が提示した報酬の額面を見た瞬間、目を見開いて立ち上がった。
「……よし行こう。かぶき町のゴーストバスター、坂田銀時にお任せあれ」
「現金な天パネ! 新八、掃除道具持ってくるアル!」
「……あの、銀さん! 私も、私も行かせてください!」
いのりが必死な顔で申し出た。銀時は彼女の顔を見て、少し眉を寄せる。
「おい、幽霊だぞ? あんた、怖くないのか?」
「……大丈夫です、……」
彼女の脳裏に浮かんだのは、禪院での日々。
あの呪われた場所から、自分が連れて来たのかもと疑う。