禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第12章 糖尿病の彼は彼女を甘やかしたい 【銀魂 坂田銀時】
「……お登勢さん。助けていただいたお礼をさせてください。私、行く当てもお金もありません。でも、掃除や洗濯、お店の手伝いなら何でもします。どうか……ここで働かせていただけませんか?」
いのりの真っ直ぐな、けれどどこか縋るような瞳にお登勢はふっと表情を緩めた。
「……ふん。あんた、こんなろくでなしの世話を焼くだけじゃ、身も心もボロボロにされちまうよ。いいさ、暇な時は下(ここ)に降りてきな。あんたみたいな綺麗な娘がカウンターに立ってくれりゃ、ウチの泥棒猫よりはよっぽど客寄せになるだろうしね」
「ちょっとお登勢さん! 誰が泥棒猫ですか、失礼しちゃうわネ!」
磨いていたグラスを置いて食ってかかったのは、猫耳をぴくつかせたキャサリンだ。
彼女はいのりをライバル視するようにジロリと睨みつける。
「 この泥棒猫、その別嬪な顔で客を色香で奪う気ですか、このメス猫が!」
「……えっ、あの、そんなつもりは……」
突然の剣幕に戸惑ういのり。
しかし、銀時が即座にキャサリンの顔面を掌で押し返した。
「おい、どの口が言ってんだ泥棒猫。お前みたいな賞味期限切れの珍獣と、このお嬢さんを一緒にするな。客が奪われるんじゃなくて、お前がいるから客が来ねーんだよ」
「なんだとォ!? この腐れ天然パ!」
「……ふふっ」
目の前で繰り広げられる、あまりにも低レベルで、けれど温かい言い合いに、いのりの口から小さな笑い声が漏れた。
禪院では、誰かが誰かのために言い争うことなど、ましてやこんな下らない冗談で笑うことなど、一度もなかったから。
その笑い声を聞いて、銀時とお登勢は一瞬だけ顔を見合わせ、満足そうに口角を上げた。
「……ま、初日から働かせるほど鬼じゃないよ。今日はもう二階で休み。明日からこき使ってやるから覚悟しな」
「はい。……明日からよろしくお願いします。お登勢さん、キャサリンさん」