禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第12章 糖尿病の彼は彼女を甘やかしたい 【銀魂 坂田銀時】
風呂上がり、お登勢から借りた清潔な着物に身を包んだいのりは、銀時と共にトントンと階段を降り、一階の店へと向かった。
カウンターではお登勢が煙草をくゆらせ、その隣ではキャサリンが不機嫌そうにグラスを磨いている。
「……あの、着物、ありがとうございました」
いのりが深々と頭を下げると、お登勢はふっと煙を吐き出した。
「いいよ。それよりあんた、少しは顔色が良くなったじゃないかい。……で、銀時。この娘、どういう状況だったんだい」
銀時はカウンターの端に座り、頭をガリガリと掻きながらいのりに視線を促した。
「……俺に聞くより本人に聞いた方が早ぇよ。おい、言える範囲でいい。話してみな」
いのりは震える手で出された温かいお茶の湯呑みを握りしめた。
呪力や術式といった「呪術師」の世界のことは、話しても通じないだろう。
けれど、あそこで受けていた「扱い」だけは、喉の奥にこびりついて離れない。
「私は……ある大きな古い家で、ずっと飼い殺されていました」
「……飼い殺し?」
お登勢の目が鋭くなる。
「はい。そこでは私は人間ではなく、ただの『家を継ぐ子供を産むための道具』でした。拒否する権利も、外に出る自由もなくて……。毎日のように、…その、無理やり……」
そこから先の言葉は、嗚咽となって消えた。
呪力がないというだけで蔑まれ、直哉に「胎」として扱われていた日々。
その凄惨な光景が、沈黙の中に重く沈殿していく。
「……」
銀時は何も言わず、ただジッと手元のコップを見つめていた。
キャサリンの手も止まり、店の中には換気扇の回る音だけが虚しく響く。
「……なるほどね。どこのどいつか知らねーが、腐ってやがるな」
銀時がポツリと、吐き捨てるように言った。
その声には、いつもの気だるさではなく、芯の通った静かな怒りが混じっている。
「それで、あんた。これからどうするつもりだい? 帰る場所は……」
お登勢の問いに、いのりは力なく首を振った。
「わかりません。気がついたらここにいて……。もう、あの場所には帰りたくない。でも、行く当ても、お金も……」
「……。なら、うちにいろ」