禪院家の落ちこぼれシリーズ 【R18】クロスオーバー
第11章 彼は彼女の心を救いたい 【ONE PIECE マルコ】
「……いのり! おい、しっかりしろよい!!」
赤髪の船から降りて数日。
かつての活気を取り戻そうと必死だった白ひげ海賊団の残党たちが、一斉に足を止めた。
マルコの腕の中で、いのりが糸の切れた人形のように崩れ落ちたからだ。
「ナース共を呼べ! 急げよい!!」
マルコが血相を変えて彼女を医務室へ運び込む。
戦火を潜り抜け、エースと親父を失ったばかりの彼らにとって、これ以上の喪失は耐え難い。
だが、診察を終えたマルコが医務室から出てきた時、その顔には涙と笑みが同時に浮かんでいた。
「……マルコ、いのりはどうなんだ!?」
イゾウが詰め寄ると、マルコは震える声で答えた。
「……生きてたんだよい。エースの、親父の命が……繋がってたんだ。……いのりは、妊娠してる」
「「「!!!」」」
静まり返った船内に、野太い歓声が爆発した。
絶望の淵にいた家族たちに、唯一差し込んだ希望の光。
それから数ヶ月、男ばかりの船員たちは、日に日にお腹が大きくなるいのりを、まるで宝物を扱うように大切に守り抜いた。
そして、産声が上がった。
元気な男の子だった。
「……見てください、マルコさん。この子の目、エースさんに似てませんか……?」
寝台で汗を流しながら微笑むいのりの腕の中で、赤ん坊が力強く拳を握っている。
マルコはその小さな指を愛おしそうになぞり、決めたように口を開いた。
「……あぁ、似てるよい。……名前は、『エース』にしよう。この子が、あいつが生きた証だ」
「エース……いい名前だ!!」
集まった隊長たちが口々に賛成し、船は久々の宴に沸いた。
小さなエースは、白ひげ海賊団の新しい「弟」として、皆に愛されて育っていった。
だが、幸福な時間は長くは続かなかった。
能力を我が物にした黒ひげが、牙を剥いたのだ。
「落とし前戦争」が勃発した。
「マルコさん! 行かないで、なんて言いません。でも、絶対に、絶対に帰ってきて……っ!」
いのりは幼いエースを抱きしめ、戦場へ向かうマルコを港で見送った。
激しい爆音、震える大地。彼女は赤子の耳を塞ぎ、ただひたすらに祈り続けた。