第4章 ファインダー越しの君 【ハイキュー!! 黒尾鉄朗】
「……また撮ってる」
体育館の入り口、バレーシューズに履き替えていた研磨が、レンズの存在に気づいてわずかに眉を寄せた。
その視線の先には、一眼レフを構え、慣れた手つきで露出を調整する🌸の姿がある。
「あ、研磨。おはよ。今日のアップの動き、いつもより少し硬いかな?」
「……別に。普通」
研磨はぷいと顔を背けたが、🌸は気にせずシャッターを切った。
彼女は写真部で、風景も、昼休みの購買のパンも、何でも撮る。
けれど、彼女が撮る「動く人間」の写真は校内でも異様なほど評価が高かった。
「おーっす、🌸! 今日から密着取材だろ? カッコよく撮れよ」
隣から、バサリと大きな影が降ってくる。黒尾が、ニカッと笑いながら彼女の頭を軽く小突いた。
「言われなくても。クロは顔がいいんだから、黙って動いてれば勝手に『映える』よ」
「ははっ、手厳しいねぇ。でも楽しみだわ。お前の写真は、俺たちの『本当』を撮るからな」
バレー部の春高本戦への出場が決まり、学校新聞の特集が決まった。
広報委員から「バレー部の躍動感を撮れるのは君しかいない」と頭を下げられ、🌸は快く引き受けた。
放課後の体育館は、熱気と、摩擦音と、ボールを叩く音で支配されている。
🌸は、練習の邪魔にならないよう隅を移動しながら、ファインダーを覗き込む。
彼女の凄いところは、「次に誰がどこへ動くか」を予知しているかのようなシャッタータイミングだった。
黒尾のリードブロック。
相手のスパイクに反応し、指先がネットを越えるその瞬間の、血管の浮き出た腕と、獲物を狙う鋭い瞳。
研磨のセットアップ。
視線だけでブロッカーを欺き、指先からボールが離れる寸前の、計算し尽くされた静寂。
「……よし」
彼女の指が軽やかに動き、電子音が刻まれる。
普通ならブレてしまうような激しいラリーの中でも、彼女の写真はピントが吸い付くように合っている。
それは、幼い頃から隣で彼らを見続けてきた彼女だからこそわかる「予備動作のクセ」を知り尽くしているからでもあった。
休憩中、研磨が珍しく自分から🌸に歩み寄ってきた。
「……さっきの、見せて」