第9章 王子と姫の愛の逃避行♡ 【ONE PIECE サンジ】
海風が穏やかに吹き抜ける、グランドライン前半の「とある島」
シャボンディ諸島を目前に控えた麦わらの一味は、次の島を指し示すログが貯まるまで、束の間の休息と補給に充てていた。
活気ある市場の雑踏の中、サンジは流れるような身のこなしで食材を吟味していた。
「よし、この香草ならルフィの肉料理にも、ナミさんたちの口にも合うな」
煙草を指に挟み満足げに紫煙をくゆらせるサンジの耳に、街の男たちの浮ついた噂話が飛び込んでくる。
「おい、聞いたか? この国の『七人の姫君』のこと。どのお方も絶世の美女だって話だぜ」
「ああ、特に末の姫様はこの世のものとは思えない美しさらしい……」
その瞬間、サンジの目がハート型に燃え上がった。
「な、なな、七人の姫君だとォ〜〜!? まさにここは楽園、恋のユートピアじゃねェか! ああ、メロリン! ぜひとも、ぜひともお目にかかりたい……!」
妄想を膨らませ、メロメロになりながら歩き出した、その時だった。
「ちょっとそこ! どいてぇーーっ!!」
空を切り裂くような悲鳴。
見上げれば建物の屋上からローブの裾を翻し、一人の少女が落ちてくる。
サンジは瞬時に妄想を切り捨てると、騎士道精神を全開にして地面を蹴った。
「おっと……危ねェな、お嬢さん」
ふわりと舞うようにして、サンジの両腕が衝撃を吸収しながら少女をしっかりと受け止めると、腕の中に収まった少女は、肩で息をしながら、信じられないものを見るような目でサンジを見上げた。
「……助かった、の……? 私……」
「お怪我はありませんか、レディ」
サンジが優しく微笑みかけたのも束の間、路地裏から怒号が響き渡る。
「逃がすか! 追え! 捕まえて連れ戻せ!」
鉄の鎧が擦れ合う不快な音と共に、抜き身の剣を持った追手たちが二人を包囲した。
その数、十数人。
少女の体はサンジの腕の中で震えている。
「……っ、ごめんなさい、巻き込んじゃって……! でも、私、どうしても……」
腕の中で震える少女を見て、サンジの口角が不敵に上がった。
「……謝る必要はねェさ。お嬢さんが震えてるのは、寒さのせいじゃねェよな?」
サンジは少女を片腕でしっかりと抱きかかえたまま、スッと一本の足を前に出した。